アップルショック直撃、部品メーカー総崩れ iPhoneの減速だけではなかった

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市場の頭打ちが現実味を帯びる中、部品メーカー各社は次の稼ぎ頭を模索し始めた。

筆頭候補として期待されているのが自動車分野。自動運転技術が普及すれば、センサーや通信部品をはじめとした、多数の電子部品が搭載されることになるからだ。

各社はスマホで培った技術を車載向けに展開しようとしている。京セラは2014年に自動車専門のプロジェクトチームを結成。ソニーは今年5月から初の自動車向けイメージセンサーの量産を開始する。

事業切り離しを決めたTDK

大きな決断を下したのがTDKだ。同社は1月、スマホの無線通信をつかさどる高周波部品事業において、米半導体大手・クアルコムとの合弁会社設立を発表した。TDKは合弁会社の株式を売却するオプションを保有し、行使した場合、約3600億円で事業を切り離すことになる。

売却資金で注力するのは電池や車載用の磁気センサー。特に後者は「5年後に2000億円規模にする」(上釜健宏社長)と鼻息は荒い。

高周波部品は通信回線の高度化によって、スマホの販売台数が停滞しても拡大が期待できる。それでも切り離すのは「台数鈍化に加え、コモディティ化も避けられない」(同)と考えたからだった。

スマホで稼げている今だからこそ、「脱スマホ」を見据えた投資をどれだけ行えるかが重要になる。今回のアップルショックは、あらためてその課題を、日本の部品メーカーに突き付けている。

「週刊東洋経済」2016年2月27日号<22日発売>「核心リポート01」を転載)

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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