新日鉄住金をM&Aに走らせた「憂鬱」の正体 なぜ今、国内4位の同業を子会社化するのか

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製鉄所の基幹設備である「高炉」だが、全国的に集約が進む。写真は新日鉄住金の君津製鉄所(撮影:今祥雄)

今期に入って2度目となる下方修正と減配を発表した2月1日、鉄鋼国内最大手の新日鉄住金はネガティブイメージを払拭しようとするかのように、3つの“攻めの戦略”をブチ上げた。

1つは国内4位、日新製鋼の買収。2つ目が仏シームレス鋼管メーカー、バローレックへの出資。3つ目が、アライアンスなど機動的な資本政策を目的とした上限1000億円の自己株取得だ。

新日鉄住金の競争力が向上

市場関係者からは高評価が目立つ。UBS証券の山口敦アナリストは「高炉1基を休止する日新製鋼への半製品供給で、新日鉄住金の高炉の稼働率が高まる。また、バローレックとの連携強化で、油井管の商圏が拡大する。原油価格が回復すれば、相当のリターンが見込める」と語る。

SMBC日興証券の原田一裕アナリストは「新日鉄住金と日新製鋼のステンレス事業は顧客層がかぶっておらず、一体化による収益向上余地は大きい。油井管の継手(ネジ)が得意なバローレックと連携を強めることで、シームレス鋼管の“最強軍団”が誕生する」と見る。

格付け会社のムーディーズは、新日鉄住金の格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。これらの投資と自己株取得による現金支出が増え、日新製鋼の連結化で約2800億円の負債も加わるからだ。

ただし「長期的にはこれらの戦略的施策が新日鉄住金の競争力強化につながる期待はある」と、同社の秋元崇志アナリストも認める。

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