鉄道各社の「大雪対応」はこんなに違っていた 影響人員は東急が最多、でも削減割合は…

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今回の調査では、遅延時分は調査項目に含まれていかったため、開示していない会社が大半だ。唯一、小田急だけが「7時台・8時台に到着する予定の列車の4割が9時以降に到着」し、「新宿到着の最大遅延は80分」としている。ほとんどの路線が似たり寄ったりだっただろう。

遅延状態が長くなると、多くの列車が駅と駅の間に滞留することになる。せっかく動き出したと思ったら、「先行列車で具合の悪くなったお客様がいらっしゃいます」などの理由で、またストップするという経験をした人は多いはずだ。

駅間で停車する列車が増えることは新たな危険を引き起こす。これも今回、各社が運行本数の大幅削減に踏み切った理由だ。鉄道技術に詳しい工学院大学の曽根悟特任教授は「もっと適切な対処ができたはず」と話す。

たとえば、大雪の場合は今回のような大幅運休、中程度の雪の場合は小規模な運休、小雪の場合は平常ダイヤにする、といったように、対策を3段階で準備しておけば、大きな混乱は起きないという。ただし、実際に取り組みを行うに当たっては「運行管理システムを改修する手間とコストがかかるため、一朝一夕にはいかないかもしれない」(曽根氏)。

入場制限の告知に改善の余地

今回のトラブルで目立った点としては、あちこちの駅で構内に入れない乗客が相次いだことも挙げられる。朝のラッシュ時は多くの列車が混雑している。そこへ運行本数を3割も削減すれば、乗れない乗客がたくさん出るのは当然だ。あふれた客をホームに待たせておくのも危険なので入場制限をするという選択肢は、鉄道会社としては合理的な判断なのかもしれない。

ただ、冬の寒い朝に傘を差して駅前に行列を作らせるのは、いかがなものか。国交省の会議では、当日の各社の情報提供の状況も紹介されたが、「〇〇駅が改札規制をしています」といった具合に、具体名を挙げて情報提供した会社は皆無だった。

このような情報提供ができれば、乗客は自宅待機するという選択もできる。国交省の担当者は「被害が最小となるよう、各社と意見交換していきたい」と述べるにとどまり、具体策の明言は避けた。

通勤ラッシュ緩和にすら対処しきれない鉄道会社に、通勤ラッシュ時の雪対策を万全にしろと迫るのは酷かもしれない。だが最近は、多くの企業が台風の上陸が予想されるとき、早めの帰宅を指示するようになってきた。

同じように、翌朝に大雪が予想される場合は「ゆっくり出社してください」といった指示を出すなど、社会全体での取り組みが必要かもしれない。寒波は今後も首都圏にやって来る。1月18日の轍は踏みたくない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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