長期病欠市議の報酬問題は、なぜ起きたのか 「個人の不祥事」と切り捨てれば本質を見誤る

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「1年以上欠席した議員の報酬を3割減額する」という条例を設けている北海道札幌市を除いて、北九州市を含む全国20の政令指定都市は、病欠などに伴う議員報酬の減額制度がない。一方で、議員報酬の減額や返納は公職選挙法では寄付に当たる行為として禁じられている。

一般市民には高額に映る「議員報酬」

北九州市の議員報酬は月額88万円、一般企業でいうボーナス(一時金、賞与)に当たる期末手当は夏と冬の2回あり、1回あたり約1.5カ月分が支給される。年収に直すとざっと1320万円超となる計算だ。単純に比較できないものの、たとえば北九州市職員の平均年収は670万円(平均年齢44.4歳)と、身分や役割などに比した部分を加味しても、一般市民から見ると議員報酬は高額に映る。

木村議員が議会に欠席していた期間の報酬総額を減額なしで計算すると3000万円超に及ぶ。このことで市議会の内外から疑問の声が上がり、NHKが1月19日にスクープとして報じたことで問題が明るみになった。

「政治家は議会に出るだけが仕事ではなく、議会がない日数のほうが多く、報酬は日々の政治活動を含めた身分に対して支払われるという側面もあります。

私は入院中も電話や面会で市民のみなさんの陳情を伺って市の担当者につなぐだけでなく、場合によって県会議員や国会議員への橋渡しもするなど、事務所としても個人としても、政治活動については医者とも相談しながらできるかぎりやってきました。

一方で、市民の皆さんから付託を受けて議席をもらっているのに、大切な議案の審議や採決などの場である議会の病欠が続いてしまったことは、非常に重く責任を感じています」

北九州市議の任期は4年。祖父、父と続く世襲の木村議員は秘書生活20年を経て、2005年に初当選。過去3回当選しており、3期目の任期は2013年2月~2017年2月だ。木村議員は本人の発言にもあるとおり、地元に根ざした政治活動を続けてきた。木村議員を知る地元有権者の一人は「木村議員は誠実な人柄で後援者からも慕われている」と評する。

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