イラン制裁解除で中東情勢はどう変わるのか 新たな対立が激しくなる恐れ

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1月23日、中国の習近平国家主席は、訪問先のイランでロウハニ大統領と会談した。テヘランで撮影。提供写真(2016年 ロイター/President.ir)

イランの核開発に関する合意が履行され、イランに対する制裁が解除されることになった。1月16日、イランと米欧など6カ国によって発表された。この制裁解除によって中東情勢はどう変わり、日本はどのような影響を受けるのかについて解説していきたい。

イランが信頼を勝ち得たわけではない

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まず、今回の制裁解除をもってイランが米欧の信用を勝ち得たと判断するのは早すぎる。イランに対する不信感は根深く、昨年7月、長年の交渉の末イランの核開発についてようやく合意が達成された後も信用できないとする声が上がった。

12月に国際原子力機関(IAEA)がイランの合意履行状況に問題はないとする報告をした後でも懐疑論はやまなかった。米国が重視する国際機関が大丈夫だと言っても信用しない人がいるのだ。今も不信の声は消えていない。米国では大統領選挙の候補の中にも露骨にイラン批判を続ける者がいる。

イランと敵対関係にあるイスラエルは、イランは核兵器を保有する野心を放棄していないとして制裁解除に反対し、国際社会やIAEAに、イランに対する監視を強化するよう求めている。また、イランは世界中にテロを拡散しているとも言っている。

核開発の関係だけでなく、中東ではほかの分野でも信頼感がはなはだしく欠如している。米国政府は、テロ支援を理由にイランに課している制裁を今後も継続するし、弾道ミサイルの開発関連では、今回の発表の翌日に追加制裁を課している。

イランが要警戒の国として扱われていることは変わりないのである。

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