サウジとイラン断交、全面紛争へ発展も 宗教や地政学面で約40年前からくすぶる不信

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シーア派指導者の処刑にバクダッドで抗議する人々(写真: ロイター/THAIER AL-SUDANI)

サウジアラビアとイランが前回断交したのは1988年、テヘランにある大使館が反対運動者たちに襲撃された後だった。その溝を埋めるには1990年のサダム・フセインによるクウェート侵攻に伴い周辺国間の力関係が大きく変動する必要があった。

もっと控えめな展開で、中東地域の最も厳しいライバル関係を解消できたかは不明だ。サウジとイランの両国はそれぞれ敵対する国々を支持しており、その関係は中東諸国間の戦争や、政治的な闘争を下支えしている。

サウジがシーア派指導者ニムル氏を処刑したことからテヘランにある大使館が襲撃された。これを受けてサウジ政府がイランの外交官を追放したことで再び関係が熱を帯び、地域の根底にある対立の解消が難しくなった。

昨年から周辺国を巻き込み対立

新たな危機の中心には、1年前にサルマン国王が権力を握って以来、イランやその同盟国と軍事的に対立しようというサウジの意志がますます強くなっている点がある。

昨年、サウジはイラン側の市民軍が南の隣国で力を握るのを阻止するためイエメンで戦争を始めた。そしてイランの同盟国シリアのアサド大統領に対する同国反乱軍への支援を強化した。政治アナリストによれば、二ムル師の処刑は主に内政に起因するものだったが、イランとの対決状態も一因だったという。

こうした介入は、サウジ政府が数年来、「野放しのイラン人による攻撃」を批判し続けて来た後に実施された。サウジはその際、イランがシーア派の市民軍を支援し、湾岸諸国のグループに武器を密輸していると主張したが、イランはこれを否定している。

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