法人実効税率を引き下げると何が起こるのか 恩恵を受ける企業と打撃を受ける企業がある

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わが国の企業には、国税として法人税、地方税として法人住民税と事業税が課されている。法人税は、企業が稼ぐ利益(所得)に比して課される。法人住民税は、定額で課される税(均等割)と国に払う法人税に比例して課される税(法人税割)とがある。

事業税も、企業の所得に比して課される税(所得割)があるが、資本金が1億円超の企業は、所得割に加えて、法人の付加価値に比して課す付加価値割、資本金等に比して課す資本割も払うことになる。この付加価値割と資本割を、外形標準課税と呼ぶ。

ここで、付加価値割の課税ベースは、概していえば人件費である報酬給与額、支払利子から受取利子を差し引いた純支払利子、支払賃貸料から受取賃貸料を差し引いた純支払賃貸料、そして税務上の当期純利益といえる単年度損益の4つの合計額である。

引き上げられる2つの税率

一見すると、企業の収支が赤字だと法人税は課されなくても、人件費は必ず費やすから事業税の付加価値割は課されるということで、赤字法人課税とか人件費課税と揶揄されることもある。

そんなこともあってか、付加価値割には、雇用安定控除がある。雇用安定控除とは、報酬給与額が収益配分額(=報酬給与額+純支払利子+純支払賃貸料)の70%を超える場合には、報酬給与額から収益配分額の70%を控除した額を、雇用安定控除として課税ベースから控除できる。人件費を多く費やしたら控除が増え、支払う税額が減るという仕組みを入れた。

前述の「法人実効税率」は、法人税と法人住民税(法人税割)と事業税の所得割の税率が対象である(「実効」と称するのは、事業税が法人税等の課税に際して損金算入されるからである)。だから、今回の法人税改革では、法人所得に課されるこれら3つの税率を引き下げることとなる。

他方、外形標準課税である事業税の付加価値割と資本割の2つの税率は、引き上げられることになる。つまり、法人所得以外の課税ベースには増税になる。これらの税率がそれぞれどれだけ変わるかは、下表に示したとおりである。 

法人税改革での税率変更(標準税率) 単位:%
   2014年度  2018年度
 国の法人税率  25.5  23.2
 法人住民税法人税割の税率(所得に対して)  約4.4  約4.0
 事業税所得割の税率  7.2  3.6
 事業税付加価値割の税率  0.48  1.2
 事業税資本割の税率  0.2  0.5
 法人実効税率  34.62  29.74

さて、税率の引き下げと引き上げが同時に行われることになるので、企業にとってどちらの影響が大きいかが、今回の法人税改革で恩恵を受けるか打撃を受けるかを決める。

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