FTを買った日経の「目指す方向」が見えてきた 高すぎる買い物と決めつけるのは、まだ早い

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現在のFTは、1884年創刊のフィナンシャル・ニュースと1888年創刊のフィナンシャル・タイムズが1945年に合併してできた新聞だ。編集幹部や執筆陣は主としてフィナンシャル・ニュースから、新聞の名前やサーモン・ピンク色の紙面はフィナンシャル・タイムズから引き継いだ。

投資家のための新聞として株価情報、企業ニュース、国内外の株式、商品、金融市場の情報に加え、一般ニュースも掲載するようになっていたが、グローバル化への道は遠かった。

合併後の最新号3万8415部のうち、海外での販売は1568部のみ。他は全てが英国内での販売だった。約2万部がロンドンで売れた。金融街シティがあるロンドンを中心に読まれる、小さな新聞だったのだ。

その後は次第に部数を伸ばして行くものの、 長い間、FTにとって、国際化(今で言うところのグローバル化)と新聞制作技術の最新化が課題となった。

FTのグローバル化はドイツから

英語で書かれた媒体であるからといって、自動的に海外ブランドになれるわけではなかった。経済に特化した新聞であることも必ずしも部数を増加させる決め手にはならなかった。部数が小さな新聞FTは、はるかに規模が大きな一般紙タイムズやデイリー・テレグラフが経済面を拡充してゆくと、「FTは必要ない」と思われるのではと経営陣や編集幹部は心配した。WSJが欧州版の発行を開始するというニュースには、存在を脅かされる思いがしたという(『フィナンシャル・タイムズ100年の歴史』、デービッド・キーナストン著)。

FTがグローバル化の第1歩を踏み出したのは1979年1月。ドイツ・フランクフルトでの印刷を開始した。その後、年を追うごとに海外での印刷拠点を増やしてゆく。

同時に、外国特派員のネットワークを充実させ、優れた現地報道を行えるようにした。「まずは人を置く」を実行に移した。

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