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2018/8/3

デジタル化時代のビジネスは
顧客との「価値共創」が重要になる Vol.3
「希少資源」のマネジメントから
「余剰資源」のマネジメントへ

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顧客と企業の活動が組み合わさって価値が共につくられていく。これを「価値共創」という。この「価値共創」を進めていくために、必要なものは何か。それが顧客=ユーザーの持っている資源だ。自分たちの資源だけではおのずと限界が来る。これからのマネジメントは、企業の「希少資源」にとどまらず、顧客の「余剰資源」を活用する時代に入ったのだ。

何に価値があるのか
最初はわからない

これからは製品を売って終わりというだけではなく、販売した後も顧客と常時つながり続けることが重要となる。そして、そこから新たな価値づくり、さらにその価値をもとに課金していくことが問われるようになるということですね。

藤川これまでは「交換価値」のみに課金していたものが、「使用価値」にも課金できるようになった。これからの経営者の役割とは、どんな事業でどのような価値づくりを設計していくのか。さらに、そこからいかに価値獲得(課金)の方法を見いだしていくのかが重要になってくると思います。

たとえば、コピー機メーカーは、すでに数十年前から、コピー機の販売のみに課金の機会をとどめるのではなく、紙やインクカートリッジの販売や、どれだけコピーされたかで課金するようになりました。価値創造と価値獲得(課金)に選択肢が増えた事例のはしりと言えます。

しかし、これまで「交換価値」だけでやってきたものに対し、すぐに「使用価値」で課金することは一見、難しいように見えます。

藤川そうですね。すぐに「使用価値」に課金することは難しいことが多いです。しかし、経営者は、導入時点では価値創造や価値獲得の全貌が見えていなくても、とにかくやりながら考えていったほうがよいでしょう。事前にあらゆることを計画しようとしたり、そのまま計画どおりに実行するという経営手法は通用しなくなります。つまり、「事後創発」できるような経営をしていかなければならないのです。

だからこそ、事前には価値創造や価値獲得の全貌が完全には見えていないものに対し、いかに戦略的な投資をし続けることができるのか。そうした考え方を持つことが経営者には必要になってきます。もっと言えば、経営者だけでなく組織全体において「新しいレンズ」を共有することが重要です。その重要性が経営陣はじめ組織を挙げて認識されないかぎり、新たな価値づくりを進めることは難しいのではないかと思います。

「製品のサービス化」
これまでとこれから

でも、これまでも製品のサービス化は行われてきたように思います。

藤川これまでの「製品のサービス化」は、お客様相談センターのようなコストセンターとして位置づけられ、取り組まれることが多くありました。また、製品の保守点検や修理など、ある程度事前に計画した作業を定期的に実施する、というようなリアクティブ(現状即応型)のものが多くを占めていました。一方、デジタル化の進展とともに広がりつつあるのは、企業と顧客が常時つながることによって、製品の使用状況をリアルタイムに把握し、今起きていることやこれから起きる事象に対してサービスを提供するプロアクティブ(未来予測型)の「サービス化」です。

「デジタルツイン」という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか。製品や工場の至る所にセンサーやネットワークが張り巡らされ、IoT(モノのインターネット)化されると、物理世界の出来事をデジタル空間上に忠実に再現することが可能となります。製品や工場の実際の使用状況に合わせてさまざまなサービスを即時的に提供することが可能となります。

顧客と共に
価値をつくっていく

藤川これまで企業の資源と言えば、ヒト・モノ・カネや情報と言われてきましたが、実は顧客側もいろいろな資源を持っているのです。たとえば、時間や知恵、知見、スキル、センスは何も企業側だけに存在するものではありません。だからこそ、企業は自分たちの資源だけでなく、顧客の資源も組み合わせて価値を創造していく。そうした発想がこれからより重要になってくると思います。

それが結果として、オープンイノベーションなど昨今注目を集める取り組みにもつながっていきます。昔のように組織の中だけに閉じた資源から価値をつくろうとしても限界がある。今は世界中の人々が持っている資源をあたかも自分の資源であるかのようにとらえ、価値づくりを縦横無尽に行うことができる時代になったのです。

確かに、SNSを通じたITサービスは、そうやってビジネスを広げています。

藤川まさに他人のふんどしで相撲を取るようなものです。自分たちは、ほとんど資源を持たず、ほかの人たちの資源を使ってビジネスをする。私は、これを「余剰資源」と呼んでいます。これからの価値づくりは、自分たちの持っている「希少資源」から発想する価値づくりではなく、いかに世界中に散在する「余剰資源」を組み合わせて価値をつくっていくかという価値づくりが重要になってくると思います。

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