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2018/8/10

デジタル化時代のビジネスは
顧客との「価値共創」が重要になる Vol.4
これからの経営者に問われる
新しい価値づくりとは?

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価値づくりを自分たちの持っている資源だけに限定する必要はない。顧客が持っている価値を巻き込み、いかに一緒に価値をつくっていくのかがこれからは重要になる。これにしたがって、マーケティングのあり方も変わる。これまでは、顧客はマーケティングの対象、すなわち、客体だった。これからは、企業とともにマーケティングを担う主体になりつつある。そこから新たなビジネスの突破口が見えてくる。

AIの進展によって
「価値づくり」が変わる

AI時代が到来する中で、「価値づくり」のあり方はどうなっていくでしょうか。

藤川AIが進展していく中で、AIができることはAIに任せるようになると、むしろ人間にしかできないことが明確になっていくと思います。AIを駆使することで、人間が本来果たすべき役割が何か明らかになっていくと考えています。

これから業種の垣根がなくなっていく中で、企業のあり方はどのように変わっていくのでしょうか。

藤川たとえば、自動車メーカーは1台1台クルマをつくるメーカーではなく、クルマというハードウエアを介したプラットフォームとなり、あらゆるモビリティの可能性を提供する会社になっていくかもしれません。

一方、サービス業のモノ化も進んでいます。メーカーではないサービス企業が人型ロボットやAIスピーカーを手掛けるなど、単にモノを売ってそれで利益を上げることを目的としてモノ化するのではなく、モノを介して新たなサービスを提供することを目的としてモノ化する、というようなことが始まっています。今後、ますます「使用価値」の重要性が高まることになると思います。

マーケティングの
主語が変わっていく

今、多くの企業ではあらゆるデータを集め、それをマーケティングに生かそうとしていますが、まだそれを有効活用するまでには至っていないように見えます。新たな突破口を見つけるには、どうすればよいのでしょうか。

藤川マーケティングを実行しているのは誰か、その主語が変わりつつあるという認識が重要だと思います。メディアのデジタル化、デバイスのデジタル化、顧客接点のデジタル化が進む中、いったい何が起きているのか。それは顧客行動を網羅的に把握できるようになったということです。つまり、計測可能性が高まりつつあります。

また、検証可能性も進展しつつあります。その結果、マーケティング活動を小規模で実験的に開始し、その結果をリアルタイムに把握しながら、臨機応変に展開することも可能になりました。今は事前に計画したマーケティング戦略を、計画どおりに実行するような時代ではなくなってきています。

また、もはや企業だけがマーケティングを行っているわけではありません。顧客もマーケティング活動に従事しています。言わば、マーケティングの民主化が進んでいるのです。

確かにそうですね。

藤川消費者の購買プロセスは、長年にわたり、「注目(Attention)」「関心(Interest)」「欲求(Desire)」「行為(Action)」のAIDA(アイダ)モデルを通じて把握されてきました。2000年代に入り、インターネットの普及とともに、購買後の消費体験を顧客同士が共有し合う「シェア(Share)」という概念も加えた「AISAS」や「SIPS」というモデルが提唱されるようになりました。

しかし、ソーシャルメディアの普及とともに、「シェア」は購買後に限定した現象ではなくなっています。いまや、お客様は「注目(Attention)」「関心(Interest)」だけでなく、買おうかどうか悩んでいる「欲求(Desire)」や、今まさに買おうとしている「行為(Action)」の段階においても、リアルタイムにシェアしています。

従来、お客様はマーケティングの対象であり、客体であったのに対して、今は、その主体になりつつある。言わば、マーケティングの主語が変わりつつあるのです。

これからの経営者に必要なのは
「価値創造」×「価値獲得」のデザイン力

そうなると、これまでのマーケティングの考えも根本的に変えないといけないということでしょうか。

藤川そうです。メディアやデバイスのデジタル化によって、私たちの日常生活のすべて、その一瞬一瞬がマーケティングの舞台になりつつあります。価値づくりが企業と顧客の両方の相互作用を通じて行われるようになると、それに応じてマーケティングのあり方も変わってしかるべきと思います。

これから経営者に問われることとは何でしょうか。

藤川たとえば、ライドシェアサービス大手は、当初、「借りる側」と「貸す側」をマッチングする「ツーサイドプラットフォーム」として立ち上がりましたが、そこに三つ目のサイドとして保険会社を巻き込み、サービスの安全性や利便性が増しました。さらに、その登録物件の稼働状況をリアルタイムで地元の飲食店に提供したり、近隣の観光名所と連携したりすることで、「マルチサイドプラットフォーム」化を進めています。つまり、多方面のさまざまな顧客との価値の共創を追求することで、さまざまな種類の価値を創造する選択肢を増やし、創造した価値に対して獲得(課金)する選択肢を増やすことが可能となります。これからの経営者は、「価値創造」と「価値獲得」を掛け合わせて、その選択肢を拡大し、いかに組み合わせて、価値づくりの全体像をデザインしていくのか。そうした力量が求められていると思います。

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