航空会社がいったん決めたことを反故にすることはともすると珍しいように感じるが、実はしばしば起こっている。
ANAでは2010年4月に国際線エコノミークラスのビールやワインなどのアルコール類を有料化したものの、JALが無料提供を維持したこともあり、導入翌年の2011年10月には再び無料へと戻している。
航空大国のアメリカでも、2023年9月、デルタ航空が自社ラウンジ「スカイクラブ」の混雑緩和のため、クレジットカード会員の年間ラウンジ利用回数を制限するとともに、最上級会員になるための決済額などを大幅に引き上げることを発表した。
これに対する顧客からの猛反発から、発表の翌月にはCEOが謝罪するとともに事実上の撤回となった事例がある。
改悪の背景にあるもの
筆者は常々「ゲームのルールは航空会社が決めるため、ユーザーであるわれわれはそのルールの枠内の最適解を見つけるしかない」と考えているが、今回のANAのケースは顧客がゲームのルールを変えたケースといえる。
今回の「改悪」の背景にあるのはSFC会員の急増である。コロナ前の2019年にくらべて2026年のSFC会員は約1.6倍と急増し、ANAの経営陣が一貫して主張しているように、ANAラウンジの混雑は慢性的な問題となっていた。
羽田空港の国内線のANAラウンジは拡張し、2027年度内に供用開始の予定となっているが、混雑の慢性化をそれだけではカバーできない。
もっとも、羽田や成田のANAラウンジをみるかぎり、(ANA以外のスターアライアンス会員の割合が高いことが想定される)インバウンド客の利用率が高く、ANAのSFC会員のハードルを上げたところで、抜本的な解決にはつながらないのではないかという懸念もつきまとう。
また、今回の「改悪」の一要因と考えられるのがANAのSFC会員が他社のスターアライアンスのラウンジを利用することの問題だ。
SFC会員が提携航空会社のラウンジを利用した場合、一定額をANAが提携先の航空会社に支払う仕組みとなっている。その金額は一説には1回につき40~60ドル程度とされ、当然のことながら、ANAに重くのしかかってくる。
SFC会員の約4割が年間100万円未満の決済額にとどまっている。そのため、ANAにカードの年会費以外あまり利益をもたらさなさい一方で、他社ラウンジ利用料が多い顧客も一定の割合で存在することになる。
また、前述したように、年間最低額で1万円台のクレジットカード所持だけでスター アライアンス・ゴールドの資格を維持するしくみは、他社の上級会員とくらべてあからさまにハードルが低く、バランスを欠いたものだった。
今回の9月の発表で、自社の判断で決められるANAラウンジの条件が緩くなった一方、スター アライアンス・ゴールドの資格については4月と変わらなかったのは、スターアライアンス他社との取り決めが「譲歩できない」ものであったことを示唆している。


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