患者に診療明細書を見せてもらったところ、保険料が1割負担の79歳男性の場合、診察と温泉プール利用を合わせた自己負担額は120円。3割負担の55歳女性でも360円だった。「理学療法士の施術(リハビリ)を受けても、1000円でお釣りがきます」と男性は言う。
近隣の温泉施設では、日帰り入浴は900円か1000円程度かかるのが一般的だ。みなかみ町営温泉(利根郡みなかみ町)でも350円であることを考えると、患者にとってはありがたい料金といえるだろう。
さきほどの男性は、「120円っていうのは、温泉プール代がほとんどかかっていないようなものだよ」と言って笑顔を見せた。
大きな岐路に立つ温泉病院
しかし、明るい話題ばかりではない。今、温泉病院は大きな岐路に立たされている。
そもそも、病院や診療所の開設・管理・運営に関するルールを定めた医療法(1948年制定)には、「温泉水を治療に用いる病院」というカテゴリーは存在しない。法的には「温泉病院」の定義や区分はなく、一般の病院と同じ扱いだ。
また、温泉プールでのリハビリは1990年代までは比較的高い診療報酬が見込めたが、2002年以降の国の診療報酬改定によって、段階的にコストに見合う経済的メリットが得にくい仕組みに変わっていった。さらに、燃料費や修繕費といった維持費や人件費がかさむ。
そのため、移転とともに温泉プール自体をやめてしまった病院も出てきた。「温泉病院」と名乗っていても、実際には温泉治療は行っておらず、職員や入院患者の浴室に温泉を引いているだけの病院もある。
1988年から1989年にかけて、竹下登内閣の「ふるさと創生1億円事業」で各市町村に1億円が交付され、各地に日帰り入浴施設や温泉プールが整備されたことも、温泉病院の温泉プール利用者が減る遠因の1つになった。
「昔はサウナや寝湯、泡風呂なんかも利用できたんだけど、今は水が入っていないんだ。冬はサウナがあるとありがたいんだけど、人が少なくなったからね」と、男性(79)が寂しそうに言う。


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