災害への備えは、物理的な問題だけではない。最低限のものが手元にあることで、状況を冷静に受け止めることができた。「このまま一晩動けなくても何とかなる」という余裕があったことで、立ち往生中もさまざまな手段から情報を集めることに専念できたことは大きかった。
なお、成田国際空港で一晩を過ごした知人は、旅行中だったため歯磨きセットや汗拭きシートを持っていたことが幸いしたという。災害はいつ、どこで遭遇するかわからない。「まさか」は、いつもの帰り道にも起こりうる。
3時間の立ち往生の末、最後は人が動いた
先述したが、SNSや無線だけでなく、目の前にいる人、すなわち車のドライバー同士でも話を交わしていた。ごく近くにいる人たちと情報を補い合っていたのも事実だ。
午後11時過ぎには雨が弱まり、警察が前後の車を分けて誘導することになった。さらに、早く帰りたいというドライバー有志も協力し、前後に1台ずつ車を誘導。逆方向のインター入り口へ1台ずつ誘導することで、ようやく立ち往生から抜け出すことができた。
振り返れば、最後に状況を動かしたのは、警察と現場にいたドライバーたちだった。
その後、無線仲間のアドバイスどおり、前の車が通ったのと同じ道をたどり、道路の縁石が見えるか確認したうえで、なるべく道路の高い位置を通るなど心がけて帰路に就いた。途中で何十台も冠水で動かなくなったと思われる車が至るところで止まっており、未曽有の大雨がもたらす光景を目の当たりにした。
帰宅できたのは、翌日午前2時半を過ぎていた。
3時間近い立ち往生を経験して感じたのは、災害時には1つの情報手段に頼るだけでは不十分だということだ。NHKのAMラジオは走行中でも警報を知ることができ、カーナビや携帯電話、防災無線、SNS、アマチュア無線には、それぞれ異なる強みと限界があった。
停車中には近くのドライバー同士でも情報を交換し、最後は警察とドライバー有志の協力で脱出することができた。
一方でガソリンや飲料、食料があったことで心理的な余裕が生まれ、冷静に情報を集めることができた。災害への備えは、必ずしも特別な用具をそろえることだけではない。普段からの給油や携帯電話の充電、小型でもいいのでラジオをかばんなどに入れておくこと。こういった日常の習慣や何気ない備えが、いざというときに役立つことも多いのではと実感した。
全国どこでも起こりうる。いつもの帰り道が突然「帰れない道」になる可能性は、誰にでもある。災害時に、すべての情報が一度に手に入るとは限らない。だからこそ、ラジオ、スマートフォン、カーナビ、SNS、無線、そして目の前にいる人。それぞれの情報を組み合わせ、自分で状況を判断する備えが必要なのかもしれない。
「まさか」は、いつもの帰り道にも起こりうる。そのとき、あなたならどうするだろうか。


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