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巨大廃墟と共にダム湖に沈んだ《60数戸の集落》…「所長は月収130円で"超高所得"」発電所景気に沸いた幻の集落の実態

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曽木発電所
レンガ造りの曽木発電所と共に、ダム湖に沈んだ“幻の集落”がある。発電所景気に沸いた集落の実態を追う(写真:筆者撮影)
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水圧鉄管を除去した後の様子(写真:伊佐市)

藩倉→発電所→観光名所の目まぐるしい変遷

伊佐市にある菱刈郷土資料館の原田純一さんは、祖父が発電所に勤めていたという。下ノ木場集落には住んでいなかったが、技術者で送電線の修理やお客様対応をしていたという。

「私はじいちゃん子でした。祖父が発電所を辞めてからもずっと、周りからは『電気屋の孫』と呼ばれていました。年々発電所当時のことを知る人は減りましたが、でもいまだに『電気屋の孫』と呼ばれますね。じいちゃんには妙見温泉や人吉などいろんなところに連れて行ってもらいました」

これは祖父の古川祏法(すけのり)さんが、退職記念にもらった品。花瓶で、上部は取り外し可能な剣山になっている(写真:原田純一さん提供)

夏になると湖から姿を現す巨大な廃墟。

雑貨屋や豆腐屋が並んだ道や全国各地から集まった社員が暮らす寮、野菜を洗いながら人々が言葉を交わした水路、ウナギのかば焼きの匂いが漂った家の前、こうして暮らしていた人たちのことをより知っていくと、在りし日の暮らしの情景や営みの記憶もまだそこに漂っているように感じられる。

発電所内は熱がこもっていたため「発電機のそばで洗濯物を乾かしていた」という話も聞いた(写真:筆者撮影)
曽木の滝に設置してあるマップ看板(写真:筆者撮影)

今回紹介した下ノ木場集落の様子は、曽木の滝周辺に点在する「冒険の書」看板にも記されている。この看板を巡って曽木の滝周辺を歩いたら、より深くこの地域を知ることができる。

60数年ほど前まで、発電所と共にここには人々の小さな経済圏があった。その痕跡はあっという間に草木に覆われ、やぶに埋もれ、水に流されて、あっという間に見えなくなってしまう。

しかし、意識して目を凝らしていけば、そこには働き、暮らし、川の幸に喜ぶ、今の私たちと何ら変わらない人々の日常生活があった。

「水没した集落」に誰かの普通の暮らしがあったことに思いをはせると、目の前の「巨大廃墟」が、それまでとは少し違って見えてきた。

(写真:筆者撮影)
参考文献
大口の歴史語る湖の主.南日本新聞.2005年5月18日.朝刊
水没地住民40年ぶり集う.南日本新聞.2005年12月6日.朝刊
高城重厚氏,故郷へ還る.技術士.2006年11月
大口市郷土誌下巻
産業遺産deツーリズムat曽木の滝.2002年9月8日.産業遺産活用事業実行委員会資料
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前編:夏になると《湖底から現れる巨大廃墟》…「まるでラピュタ」水没して忘れ去られた“日本一の発電所”が再注目された訳

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