本作『夫婦別姓刑事』の脚本を手がけた、矢島弘一氏は、自身のnoteで「今回起きた『本当のこと』は、あの作品に関わった当事者にしかわからない」と語っている。
まさにその通りであるし、さらに言えば、当事者でさえも全貌が理解できているとは言いがたいうえに客観的、中立的にモノを見ているとも言いがたい。
筆者自身、広告代理店勤務時代、自分の近しいところで問題が起きたこともあったし、自分が勤める会社、および取引先の不祥事対応にあたったこともある。メディアやSNSで語れていることは事実の一部分にすぎないし、そこから生み出される解釈の多くは間違っていたり、偏向したりしていた。
特定人物を「絶対的な悪」と断定し、その人格やキャリアまで否定する動きは、近年の炎上では珍しくない光景だ。今回もまた、第三者が物語を単純化して理解をして、当事者以上に感情的になってしまった印象は否めない。佐藤さんと橋本さん、どちらもある意味で被害者であり、世間が2人を追い詰めてしまったとも言える。
「フジテレビは何も学んでいない」のではなく、学んだからこその“失敗”
今回、フジテレビは、外部弁護士による調査結果とともに、撮影現場で何が起きたのかを、当事者に配慮しつつも可能な限り公表した。
この説明だけですべてが真実かつ公正であると断定することはできないし、冒頭で述べたように、佐藤二朗さんはフジテレビの発表を受けてSNSに反論の投稿を行っている。
2024〜25年、元SMAPの中居正広さんとフジテレビ元アナウンサーの間で起きたトラブルをきっかけに、フジテレビのガバナンス不全が露呈し、同局は大きな危機状態に陥った。
今回の問題に対して、「フジテレビは(過去の失敗から)何も学んでいない」という批判が起きたが、実態はまったく逆で、過去の失敗から学んだがゆえに、過剰にリスク回避志向になり、佐藤さんにしわ寄せが行ってしまった――というのが実態であるのではないか。

