そうした中、台北の銅鑼湾書店には多くの日本人が足を運んでいた。
来店者は、大きく分けると20代から30代の若い世代と、40代から60代以上の研究者や専門家、ビジネスパーソンが中心だったとされる。
日本人も多く訪れた書店
2019年の香港における逃亡犯条例改正案への抗議運動をリアルタイムで目の当たりにし、アジアの民主主義や人権問題へ関心を持った日本の大学生や若手社会人も少なくなかった。彼らは「歴史の当事者」である林さんから直接話を聞くため、台湾旅行の目的地の一つとして書店を訪れていたのである。
一方で、報道関係者や東アジア政治の研究者、台湾駐在のビジネスパーソンらも頻繁に足を運んだ。彼らは単なる観光ではなく、中台関係や香港の現状に関する一次情報を得ることや、書籍の購入を通じて林さんの活動を支援することを目的に、継続して書店を訪れ、対話を重ねていた。
そんな林さんが、日本のメディアや訪問者に対して最も強く伝えようとしていたことがある。
それは、「独裁権力の脅威は決して他人事ではない」という地政学的な警鐘だった。
林さんは、「香港が倒れれば次は台湾、そしてその次は日本、あるいはアジア全体が中国共産党政権の圧力にさらされる」との危機感を繰り返し語っていた。
また、日本の人々に対しては、平和で民主的な社会に慣れているからこそ、自由は自然に存在し続けるものではなく、守り続けなければ失われかねないということを、香港の経験から学んでほしいと訴えていた。
とりわけ若い世代には、「もっと政治や周辺地域の情勢に目を向け、自分の頭で考える力を読書によって養ってほしい」との思いを伝え続けていたのである。
林さんが必死に私たちへ伝えようとしていたメッセージの重みは、計り知れない。

