東洋経済オンラインとは
ライフ

大谷翔平"捕手への詰め寄り"に「怖すぎる」「チビりそう」の声殺到も…それでも大谷が株を上げた《感情のトリック》の正体

11分で読める
大谷翔平
ドジャースの大谷翔平選手が、チームメイトのラッシング選手に“ガチ切れ”?写真:Michael Turner/MLB Photos via Getty Images)
  • 宮本 文幸 「見た目」戦略研究家/桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授
2/6 PAGES
3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

そしてもう1つ、見過ごせない事実がある。6月27日の試合で、当のラッシング選手が本塁打を打った際、大谷選手は笑顔で迎え、タッチをして祝福した。

アメリカのメディアは「彼らの間に確執は残っていない。ただ勝ちたいという思いと、それを一緒に喜びたいという気持ちがあるだけだ」と評している。ドジャースのロバーツ監督も「彼は時々、すごく怒ることがある。だが、自分の行動には結果が伴うことを理解している」と述べている。

怒りを見せた直後に、何のわだかまりもなく相手を祝福できること自体が、感情に振り回されていない証しだと言える。

大谷翔平に抱いた「怖さ」の正体

大谷選手の表情が怖く見えたのは、単に「普段優しい人が見せたギャップ」からではない。

普段の信頼性の高さとの落差、それが一時的な反応にすぎないという事実、相手を傷つける目的ではなかったという可能性、怒りと決意が表情として近接していること、そして怒りというエネルギーを攻撃ではなく結果に転換する力。

これらが重なって、私たちは「大谷が怒っている」という第一印象の奥に、別の意味を見出し、それがより強い感情へとつながった。その意味とは、「この人は、自分の感情を目的達成のために制御できる、強く信頼できる人だ」という確信だったのではないか。それが「怖さ」という副産物を生んだのだ。

この構造は、トップアスリートだけの特別な話ではない。

腹が立ったとき、その感情を相手にぶつけて終わるのか、それとも、その悔しさやもどかしさを、今の自分にできる工夫や努力に向け直すのか。

後者を選べたとき、怒りは破壊的な感情から、自分を一歩前に進める力へと変わる。大谷選手の“表情”が、それを私たちに教えてくれた。

【参考文献】
※1:Todorov, A., M. Pakrashi & N. N. Oosterhof (2009) Evaluating faces on trustworthiness after minimal time exposure, Social Cognition, 27(6), 813-833.
※2:Spielberger, C. D. (1999) State-Trait Anger Expression Inventory-2 (STAXI-2): Professional Manual, Psychological Assessment Resources.
※3:Feshbach, S. (1964) The function of aggression and the regulation of aggressive drive, Psychological Review, 71(4), 257-272.
※4:Bushman, B. J. & C. A. Anderson (2001) Is it time to pull the plug on the hostile versus instrumental aggression dichotomy?, Psychological Review, 108(1), 273-279.
※5:Woodworth, R. S. & H. Schlosberg (1954) Experimental Psychology (Revised Edition), Henry Holt.
※6:Carver, C. S. & E. Harmon-Jones (2009) Anger is an approach-related affect: Evidence and implications, Psychological Bulletin, 135(2), 183-204.
※7:Giles, G. E., C. A. Horner, E. Anderson, G. M. Elliott & T. T. Brunyé (2020) When anger motivates: Approach states selectively influence running performance, Frontiers in Psychology, 11, 555302.
※8:Hanton, S. & D. Connaughton (2002) Perceived control of anxiety and its relationship to self-confidence and performance, Research Quarterly for Exercise and Sport, 73(1), 87-97.

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数