手堅い本業があり、安心して暮らしていける収益を上げているからこそ、詩吟教室や文化の普及活動に注力できるという。とはいえ、文化を持続するにはマネタイズは必須課題だ。
文化の火を途絶えさせたくないという理想だけでは、詩吟を残していこうとする人が減り続けるはずだ。これから、詩吟はどんな形でビジネスを展開していくべきなのだろうか。
合言葉は「伝統のエンタメ化」詩吟が再び光を浴びるためにできること
「私は旦早流吟詠会の三代宗家として、詩吟のエンタメ化を目指しています」
筆者の疑問に対し、島田さんは胸を張ってそう答えてくれた。しかし、詩吟は伝統芸能なのにエンタメ化するのは望ましいのだろうか?
「伝統芸能という格式の高さも魅力ではありますが、まずはたくさんの人に『詩吟』を知ってもらわないことには何もはじまりません。だからこそ、エンタメとして詩吟の裾野を広げていきたいんです」
確かに、文化を後世に残すには、エンタメ化は重要なターニングポイントになるのかもしれない。実際、近年の日本ではDMMが展開するゲーム『刀剣乱舞ONLINE』をきっかけに、失われた刀の復元がおこなわれている。刀の擬人化というエンタメを通し、歴史の陰に埋もれていた刀に再び光が当たりはじめたのだ。
例えば、2025年に栃木県足利市立美術館で開催された刀剣「山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)展」では、同刀の展示において来館者数過去最多の4万4030人を記録し、関連事業を含めた経済波及効果は8.6億円にも及んだ。山姥切国広が刀剣乱舞で擬人化されているからこそ、これほどの経済効果をもたらしたのは言うまでもない。
上述の例からわかるとおり、若者は、決して日本の文化に興味・関心がないわけではない。ただ単に、文化に触れるきっかけがないだけなのだ。舞踊に合わせて吟じたり、刀の演舞に合わせて吟じたり、他の伝統芸能との組み合わせも有効だろう。
江戸末期の志士たちゆかりの展示をしている博物館でBGMとして詩吟を流しても、没入感の演出につながるかもしれない。こうしたさまざまな道を模索しながら、詩吟文化の継承と大衆への普及を目指し続けている。

