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「わが子の時は何もできなかった」——元IT管理職が56歳で退職し「引きこもり」の若者を救う「塾」を開いた信念

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塾生とコーチたち
「八おき塾」のランチ会のため、食事を作る塾生とコーチたち(写真:八おき塾提供)
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また、人員を補充する際はその部署の人間が面接を行うという社風から、採用実務の経験も豊富にあった。

「あの当時、人材育成の現場では『100人の会社なら3、4人は出社できなくなる者がいる』と言われていました」

生き生きと働く社員が減れば、組織は衰退してしまう。組織にとって重要なのは、入社した人間をいかに伸ばし、沈んだ気持ちになった場合も上向きにするかということだった。

若手社員の育成を任された鳥巣さんは、こうしてコーチング技術を身につけることになる。そして、会社で培ったこれらの経験と技術を使えば、引きこもりの若者を再び社会へと送り出す支援ができるかもしれないと考えるようになっていく。

この時、鳥巣さん56歳。本業に捧げた30余年。これ以上年を重ねれば、新しい挑戦は難しくなる。蓄えもあり、退職してもなんとかなるという見通しも立った鳥巣さんは、会社を辞め、引きこもり支援「八おき塾」の立ち上げへと踏み出した。

20代の引きこもりが増えてきた

少し前の調査になるが、全国の引きこもりの人の人数は推定146万人と言われている(2022年内閣府)。鳥巣さんは最近の傾向として、20代の引きこもりが増えていると感じている。

「この活動を始めたころ、ここにくるのは30代とか40代の人が多かったのですが、最近は20代の子が増えたような印象です。20代のうちに相談できるところが増え、20代で解決するケースが多くなったのかもしれません」(鳥巣さん)

鳥巣さんの運営する八おき塾はビルの一室の小さな場所のため、それほど多くの人数を受け入れることはできないが、毎年10人前後を受け入れている。

現在の対象は、義務教育が終わる15歳から39歳までの若者だ。明確な「卒塾」時期は設けていないが、進学後3カ月や、アルバイトに行き始めて3カ月など、新しい歩みを始めておよそ3カ月がたつと卒業証書を渡している。

多くの場合、1年ほどで卒塾していくという。八おき塾ではなにごとに対しても強制はしない。だが、おせっかいは続けていく。コーチングの技術を使って塾生ひとりひとりの本音を引き出し、気持ちを後押しするサポートをしている。

人事として採用にも携わってきた鳥巣さんや、八おき塾を支援してくれているキャリアカウンセラーらの力も借りて、エントリーシートの書き方や、面接練習なども行う。

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【いろいろな人と交わり成長していく】

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