地元に帰った当初は、アルバイトを探すこともやってみたがうまくいかなかった。
思えば、東京で暮らしていた頃もそうだった。初めての一人暮らしで、アルバイトは大学に通う生活が落ち着いてから、と考えていたトモアキさんは、5月からアルバイトを探し始めた。ところが、やりたかったアルバイトはもうなくなっていた。
「大学生といえば塾講師とか、家庭教師のバイトかなと思って応募したんですけど、遅かったみたいです」(トモアキさん)
その後、単発で都議選の出口調査のバイトを1度、スキーサークルの合宿の際に現地の宿で住み込みバイトをしたものの、定期のアルバイトはしたことがない。
「一応、引きこもってた間もバイトをやろうかなって思った時期もあったんです。福岡に帰ってきた時も、バイト始めようと思って、2カ所に応募しました。1つは書類で落ちて、もう1つは面接まで進んだけれど落ちました。そこでちょっと、完全にバイトやろうというやる気が失われちゃって……」(トモアキさん)
こうした小さな挫折が積み重なり、すべてにおいてやる気が失われていってしまった。福岡に戻ってからも外出はできず、引きこもり生活は約2年に及んだ。外に出なくなったトモアキさんの髪の毛は、鎖骨あたりまで伸びていた。
「八おき塾」へ通うようになって
この間、両親は必死だった。引きこもりに対する相談窓口を探す中、見つけたのはカウンセリングを行うところだ。トモアキさんは親の勧めを受け入れて、そのカウンセリングを受けにいった。
「カウンセリングは喋って楽になるみたいな効果はあったんですけど、別に何か前に進むことはないじゃないですか。これ以上カウンセリングに行っても意味ないかなっていう気になって、行かなくなりました」(トモアキさん)
結局、引きこもりから脱することはできず、またいつもの日々が始まった。なんとか外との接点を持たなくてはと、母親も悩んでいた。そこで相談したのが、今トモアキさんが通う福岡わかもの就労支援プロジェクト「八おき塾」(福岡市博多区)だった。
名前に塾という文字がついてはいるが、学習塾とはかなり違う。八おき塾は「コーチングで引きこもりや不登校になった若者の社会復帰(就労・就学)を支援」する場所。
塾生一人ひとりに担当コーチが付き、定期的な面談のほか、簡単な実務経験で働く練習をしたり、ランチ会の準備や片付けを通して生活面を整えたりしていく。
支援の対象は15歳から39歳の若者で、70%の塾生が入塾から1年以内に卒業し、就労・就学を果たしているという。
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【「何度転んでも大丈夫」】
