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EV失速に直面した電池メーカーがこぞって電力貯蔵事業への転換を模索、ところが生産ラインの変更は難しい

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写真は電気自動車(EV)バッテリー充電器のディスプレイ。2023年11月、英ロンドンで撮影(写真:ロイター)

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電気自動車(EV)市場の低迷に直面している米国の自動車・電池メーカーが、電池工場を改造し、AI(人工知能)向けの電力需要に応えるエネルギー貯蔵システム(ESS)製造に転用しようと奔走している。しかし生産ラインの変更は容易ではなく、エネルギー貯蔵の需要もEV電池工場の余剰スペースを吸収できるほど速やかには拡大しない見通しだ。

電力とエネルギー貯蔵需要の急増は、米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォード・モーター、パナソニックホールディングス、韓国のサムスンSDI、LGエナジーソリューション(LGES)といった電池を手掛ける企業にとって絶好のタイミングで訪れた。これらの企業は過去10年間、米国のEV市場拡大を見込んで1000億ドル以上の資金を投入、あるいは投入を計画してきたが、化石燃料を優遇するトランプ米政権の政策によってEV市場は打ち砕かれた。

定置型のESSはEV用に似たリチウムイオン電池を使用し、太陽光や風力などで発電した電力を蓄え、需要のピーク時や送電網の負荷が高い時に放出するシステム。米国では、膨大な電力を消費するデータセンターやクラウドコンピューティング用などの需要が拡大するとみられる。

しかしロイターの分析により、予測されるエネルギー貯蔵ブームは、EV電池の需要崩壊を補う規模には到底及ばないことが分かった。米国のEV需要はもともとメーカーの予測を下回っていたところに、2025年9月30日には7500ドルの購入者向け税額控除が打ち切られ、販売台数は過去6カ月で25%以上も落ち込んだ。

多くのESSが採用する電池化学設計へと工場を転換するには、時間と費用がかかるだけでなく、現在は中国が支配している技術に踏み込む必要が生じる。

韓国LGESの北米責任者、ボブ・リー氏は、北米にある3つの工場をESS向けに転換していると明かした。米国の電池事業は、EV不況の余波で今後も過剰設備を抱え続けるだろうと話す。

フォードは今後2年間で20億ドルを投じて蓄電部門を設立し、「多様化され収益性の高い新たな収益源を創出する」としている。またGMとLGESの合弁会社であるアルティウム・セルズは先月、テネシー州のEV電池工場を蓄電用のセル工場に転換すると発表した。

工場改造は複雑で高コスト

コンサルティング会社ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスによると、北米の定置型電池の需要は今年76ギガワット時(GWh)に達する見込みだ。しかし、自動車業界がEV電池に大規模投資を行った結果、工場の余剰スペースは約275GWh相当と、それを大きく上回っている。蓄電需要は今後5年間で125GWhへとほぼ倍増する見通しだが、それでもEV電池の余剰生産能力を吸収するには不十分だ。

大半のESSが利用する「リン酸鉄リチウムイオン(LFP)」電池は、北米のEV電池で主流のニッケル系電池よりも安価だ。工場をLFP仕様に切り替えるには、最長18カ月の期間と数億ドルの費用がかかると電池メーカー幹部らは言う。

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【中国がLFPの技術とサプライチェーンを支配】

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