「どなたにお会いしても、心が動かないというか、結婚するイメージが持てないんです」
彼は、自分が相手を好きになれる感情を重要視していた。
これには理由があった。これまでリアルに女性と深く関わった経験はなかったのだが、過去に強く惹かれた女性がいて、そのときの感情が忘れなられないというのだ。
その女性は、コンセプトカフェで出会ったキャストだった。彼女に惹かれて、週末は店に通い詰め、決められた滞在時間が過ぎても延長料金を払い、何時間も居続けたという。
ところがある日、突然彼女が店を辞めてしまったので、盛り上がっていた気持ちは行き場がないまま、遮断された。そして、“人を好きになるというのは、燃え上がる感情が湧き上がるもの”という思いだけが残った。
だが、婚活で出会う女性には、それほど強く感情に揺さぶられることはなかった。
結果として、「何人に出会っても、好きになれる人がいない」という状態に陥る。それが次第に、「自分は人を好きになれないのではないか」という不安や焦りへとつながり、疲れを感じるようになっていた。
彼にとって人を好きになる理想型は、湧き上がる強い感情を抱くこと。しかし、それは、コンセプトカフェに通い詰めた女性に抱いたもので、実際の恋愛ではない。なにより相手はお客の心を掴むプロなのだ。
婚活の場合、サイトに選択肢がたくさん存在している。それだけに、好きになる感情が湧かないことを理由に、“この相手は違う”と判断して次に進む。これは、選択肢が多い婚活においては特に陥りやすい思考だ。
傷つきたくないから進めない
たつえ(42歳・仮名)は、穏やかで控えめな印象の女性。専門学校を卒業後、事務職として長く勤め、生活は安定していた。
30代後半で一度大きな病気を経験したのだが、現在は完治し、日常生活にも支障はない。ただ、その出来事をきっかけに、「自分はもう女性として選ばれにくいのではないか」という思いを抱えるようになっていた。
次ページが続きます:
【たつえが婚活を始めた理由】
