党大会に参加した政府・与党幹部の多くは、その時点で女性隊員のリードによる国歌斉唱を疑問視する態度は示していなかった。党大会の“仕切り役”とされた萩生田光一幹事長代行は、14日の記者会見で「党側の発案ではなく、演出などを企画する業者側から推薦があった。防衛省は了解していた」と述べ、党の対応に問題はなかったと釈明した。
自民党総裁の高市首相は14日、首相官邸で記者団のインタビューに対して「自衛官は職務ではなく、私人として旧知の民間の方から依頼を受け、国歌を歌唱した。自衛隊法違反には当たらない。(党大会出席も)法律的に問題はない」と強調。ただ、「会場に着くまで自衛官がおみえになることは知らなかった」とも述べ、自らの関わりは否定した。
今回の問題で批判のターゲットとなった小泉防衛相は、14日の参議院外交防衛委員会で女性隊員の行動について「自衛官の政治的行為を制限する自衛隊法61条には抵触しない」「職務ではなく、私人としてイベント会社からの依頼を受けて国歌を歌唱したと聞いている。国歌を歌唱することが政治的行為に当たるものではない」などと釈明を繰り返した。
しかし、党内外での批判の広がりを受けて、冒頭で触れたように、木原官房長官は15日になって見解を一転させた。これには党内から「高市首相への批判を交わすための苦肉の策」と揶揄する声が相次いだ。同時に、“反高市勢力”からは「党大会の運営のずさんさも含め、“高市一強”でのおごりと緩みの表れ」という厳しい指摘が出るなど、政権を揺さぶる材料となりつつある。
さらに、連立を組む日本維新の会の藤田文武共同代表は「不適切だったという評価を下さざるをえない。自民党の意思決定はうかつだった」と批判。吉村洋文代表も「自民党側が政治的に配慮すべきで、自衛官が不利益にならないようにしてほしい」と苦言を呈するなど、与党内の“亀裂”も表面化した。
小泉たたきは「長い目では逆効果」との声も
野党各党も攻撃姿勢を強めている。14日の参院外交防衛委員会では、共産党の山添拓政策委員長が「憲法への自衛隊明記を目指す高市総理のもとで起きた、目に余る政治利用だ」などと、憲法改正問題も絡めての「高市批判」を展開した。
また、中道改革連合の小川淳也代表は15日の記者会見で、「法に抵触しない」という政府側の主張について「本当にそうなのかは疑念が残る」としたうえで、「(官房長官が)政治的な責任に言及したことは、再発を防止する観点から一定の前進だ」と語った。
その一方で、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は「シビリアンコントロール(文民統制)の中で、自衛官は活動している。現場では、部下は上官には逆らえないし、自衛官や防衛省職員は政治家に文句を言えない」と指摘。そのうえで、自民党の対応について「個人に依頼し、個人が受けて、個人の問題だと。これじゃ、彼女(女性隊員)がかわいそうだ。この3等陸曹はまったく悪くない」などと、自民党幹部や小泉防衛相の対応を批判した。
自民党内には「そもそも憲法改正で『自衛隊の存在の明確化』を狙っているのは高市首相ら党内保守派なのに、今回の問題で批判の矛先を小泉氏に向けさせようとしている政局を絡めた動きは、長い目で見れば逆効果」(党長老)との声もある。今後、高市首相らの思惑どおりの展開になるかは不透明だ。
