辻:そうなんです。だから、政府が「日本は他国を侵略なんてしない、これはあくまで国を守るための防衛力強化だ」と言っても、「本当にそうか? 国の言うことを信じていいのか?」と疑ってかかる気持ちがあるのだと思います。だからこそ、国家権力の暴走を制限する憲法前文が今再度SNSなどで注目されているのではないでしょうか。
小泉:政府不信や社会への無力感で言えば、ロスジェネ世代の方がもっと強いかもしれません。血を吐くような思いで見つけた職場がブラック企業で使い倒されるとか、当時はパワハラという言葉すらなかった時代です。エリート層が自分たちの明るい未来に結びついていないという断絶感は、90年代からずっと日本人が抱え続けているものだと思います。
ただ、自国の政府に対する健全な懐疑心を持つことは重要ですが、その懐疑心は世界全体に向けた方がいいと僕は考えています。日本の高市早苗首相、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、アメリカのトランプ大統領、北朝鮮の金正恩総書記。この並びの中で、どれが比較的信用できそうかという話なんですよ。
辻:それはすごい並びですね(笑)。
小泉:自国が周辺国に軍事的脅威を与えてしまう懸念と、外国から理不尽な脅威を受ける懸念を比べたら、今は圧倒的に後者の方が高い。だからこそ、現実的な「抑止の論理」を考えなきゃいけない、というのが僕の考え方です。
際限なき軍拡への懸念と抑止への疑問
辻:そこで「抑止とは何か」という疑問が湧くんです。実際に武力行使をしているのはトランプ大統領やネタニヤフ首相、プーチン大統領であって、意外と中国は一番直接的な軍事行動を起こしていませんよね。
小泉:最近、「中国は相対的にまともなんじゃないか説」が信憑性を持ってしまうような国際情勢になってますね。
辻:そうなんです。既に国民の生活がきつい中で、どこまで防衛費を増やせば抑止の「天井」になるのかが見えません。どれだけお金を積んでも中国の規模には勝てないでしょうし、勝つことが目的ではなく「抑止」であればいいとしても、際限がないように見えてしまいます。
護憲派はよく「お花畑」と揶揄されますが、勝ち目が確実にない相手に対して、無闇に喧嘩を売らない、刺激しないように立ち回ってくれというのは、むしろ真っ当な感覚ではないかとも思うんです。
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【「自衛隊ゼロ」なら日本はどうなる?】
