辻:一方で、希望的観測もあります。同じSNSを通じて広がる言説でも、安易な軍拡論や抑止論だけでなく、反戦の声や護憲の声が若い世代、特に女性を中心に強くなってきている現状もあるからです。かつてのデモは、主催者側がいてそこへ固定化された人たちが集まるという構図でした。
しかし今は、イラストレーターさんが「9条を守ろう」というイラストを描いてネットプリントに登録し、参加者が自分の好きなデザインを選んでプリントアウトして持っていくなど、主体的な参加の仕方が増えています。
デモへの参加ひとつとっても、SNSを通じてそれぞれが自分にできる主体的な参加の仕方を模索している時代だと思うんです。だからこそ「反戦なんて当たり前だからあえて言わない」という冷笑的姿勢ではなく、丹羽さんのようにあえて言葉にし、可視化していくことの意味を強く感じた読後感でした。
世代間の戦争と安全保障に対する認識
小泉:僕の率直な感想を言うと、「自分の親父と話しているみたいだな」と感じました。丹羽さんは39年生まれで、僕の父親は49年生まれです。
祖父の世代になると実際に戦争へ行っており、僕の片方の祖父はシベリア抑留を経験しました。抑留から帰ってきて仕事を探したら千葉県に米軍基地があり、そこの軍属の仕事が見つかったから千葉に住んだ。それが我が家が千葉県出身である理由なんです。
辻:ご家族の歴史が戦争の記憶と直接結びついているのですね。
小泉:ええ。だからこの本は、戦争をかなりリアルに記憶している世代、自分の一親等のなかで弾が飛び交う戦場を経験した人たちの「戦争論」なんですよね。
その世代の人たちにとっては、自国が愚かな戦争を始めて死ななくていい若者を死なせたことや、アジアの国々で多くの人を死なせたことが、日本として絶対に避けなければいけない「破滅」だったんだろうと思います。つまり「自分たちが侵略者にならないこと」こそが、安全保障の中核だったということです。
辻:それは本当に、すべての前提になるべき大事な視点だと思います。
小泉:間違いなく今の日本の安全保障の大前提ですし、国連憲章に基づく日本国憲法は実際にそのようにできています。ただ、82年生まれの僕らからすると、それって「あまりにも大前提」なんですよ。今から日本が中国大陸に攻めていって爆弾を落としますかとか、民間人を殺戮しますかとか、我が国はそんなことをする国ではないでしょう、という感覚が根底にある。
他方で、僕が小学生の時に、北朝鮮のテポドンが日本の上空を初めて通過していきました。だから「日本から攻め込んでいかないのは大前提として、じゃあ他国から攻め込まれないための保障はどうなっているんですか?」という問いが僕らにはずっとあったんです。
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【世代により「脅威」の見方が異なる】
