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日本人の右傾化はウソ? "日本の危機"に右派の動きが活発化も、世論はむしろ「無関心」の実態

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日本国旗
「最近の日本は右傾化している」というのは事実なのでしょうか(写真:muroro/PIXTA)
  • 松谷 満 中京大学 現代社会学部 教授
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つまり、愛する「過去の日本」が貶められようとする「危機」に対する反動が、いまに続く日本の右派の原動力とみることができます。くわえて、民主党政権期、野党であった自民党の「右傾化」が進みました。これは、下野という危機において自らのアイデンティティを右派であることに求めようとした結果だと指摘されています*4

第三に、こうした時代の変化と並走したメディアの役割をあげることができます。1990年代には、雑誌・マンガといった媒体が歴史認識問題などにおいて読者に対する啓発的役割を果たしました。そればかりではなく、こうした問題に対する一般市民の関与を促すことにもなりました*5。その後、インターネットの普及によって、右派が発信する情報は爆発的に増加し、また多様な展開をみせながら現在にいたります*6。マスメディアでもインターネットメディアでも右寄りの情報の流通量は2000年代以降、桁違いなものとなりました。

しかし、世論が全体として「右傾化」したとの調査結果はほぼみられません。この点には注意が必要です。一時期、「右傾化」への危惧が大きく語られましたが、一般の人々にはさほど響いていないとみることもできるでしょう。

排外主義運動の登場が日本社会を大きく変えた

ただ、先に述べたような歴史認識もからむ近隣諸国との外交問題がたびたび生じるなか、世論の中国・韓国に対する感情は悪化していきました。内閣府「外交に関する世論調査」によると、中国に対しては2000年代半ば以降、「親しみを感じない」が多数となり、年々その傾向が強まっています。具体的には、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を機に中国で反日感情が高まり、それに呼応するように日本の対中感情も悪化したというきっかけが大きいといえます。

韓国に対しては、2000年代には「親しみを感じる」が多数でした。しかし、2012年に急な逆転が生じ、「親しみを感じない」が圧倒的多数となりました。直接的なきっかけは李明博(イミョンバク)大統領が竹島に上陸し、かつ植民地時代に関して天皇の謝罪が必要と発言したことです。

その後、世論の対韓感情は低いまま推移していましたが、2024年調査では「親しみを感じる」が再び多数となっています*7。このように、対外感情は外交関係の影響を受けやすいものです。ある時期悪化したとしても、そのときどきの出来事の影響を受けやすい不安定なものととらえたほうがよいと思います。

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【排外主義運動と行政の対応】

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