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患者を不幸にする"標準治療原理主義"の正体…標準治療は「規準治療」 40年患者を診てきた医師が明かすがん医療の実態

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病棟で立つ医師
「がん治療において、標準治療は最良の治療ではない」と筆者。その真意は?(写真:Tatsuya Osawa/PIXTA)
  • 新見 正則 オックスフォード大学医学博士・新見正則医院院長
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標準治療やガイドラインを杓子定規に厳守した結果、体力も気力も食欲も衰えて、当院を受診する方も少なくありません。

標準治療原理主義の主治医を持つと患者さんは不幸になります。標準治療やガイドラインが「規準治療」であることを正しく認識して、そして、患者さんに合わせて応用できる医師が専門家だと思います。

状態に合わせた調整が必要になる

臨床試験は体調の良い患者さんで、年齢も比較的高齢ではない人が選ばれます。その理由は、臨床試験を行う製薬メーカーや医療サイドには相当な費用負担が発生するため、途中で脱落する人を減らしたいのです。

そんな「生きの良い患者さん」から得られたエビデンスを、そのまま実臨床で杓子定規に利用すると不幸なことが起こります。実際にガイドラインだけを覚えて、原著(英文論文)を読まない専門医が実は少なくありません。

標準治療は規準治療ですから、それを基に目の前の患者さんに応用することが大切です。多くの患者さんでは標準治療やガイドラインが当てはまりますが、2割から3割の患者さんでは、標準治療が規準治療であることをしっかり意識して、標準治療を応用することが必要なのです。

標準治療原理主義の主治医に当たると、命を落とすリスクは増大します。

例えば、抗がん剤による治療を行ったものの、つらさばかりが先に立ち、効果を感じられない場合があったとします。「原理主義者」であれば、そのままの治療を継続させようとするでしょう。

残念なことに、抗がん剤の減量や投薬期間の短縮(デエスカレーション)によって、効果が変わらないかを確かめる臨床試験(非劣性試験といいます)を製薬会社が行うこともありません。製薬会社の利益が減るという簡単な理由によるためです。

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【医師2年目で経験した苦い記憶】

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