地球低軌道で交通事故が起きる? 科学者たちが懸念する「人工衛星が多過ぎ」問題

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人工衛星やロケットなどが大気圏に再突入すれば、その機体は激しい大気との摩擦によって燃え、大半は蒸発して上層大気中にガスとなって漂うことになる。そしてそのガスとなる物質には、酸化アルミニウムやリチウムといった、潜在的に危険な汚染物質が含まれており、それらの濃度が急激に上昇すると、オゾン層の破壊や気候変動の原因になる可能性が、まだ研究段階だが指摘されている。

南カリフォルニア大学の研究では、大気上端に流入する人工衛星由来の酸化アルミニウム化合物の量が16年の年間2.13トンから22年にかけて8倍の年間16.6トンに増加したと推定されている。そして、将来的にメガコンステレーション計画が実行されれば、人工衛星の再突入率が上昇するため、年間362.7トンの酸化アルミニウム化合物が上層大気に流入すると予測されている。

現在のところ、こうした問題にはまだほとんど対応策がない。地球への影響をより正確に特定するには、さらなる研究が必要だ。

なお、大気圏に再突入した人工物は大気圏ですべて燃え尽きるわけではなく、地上に燃え残りが落下する確率がゼロではないことも、覚えておく必要があるだろう。

宇宙の商業化と研究分野への配慮

地球低軌道から月の間の宇宙空間は、かつては米ソ冷戦下での国威発揚や技術力誇示の場だった。それが冷戦終結後は、軌道上に国際宇宙ステーション(ISS)が建造され、参加各国が協力して学術研究などを行う拠点となった。

しかし21世紀も1/4が過ぎた現在、ISSは退役が迫り、一方でSpaceXをはじめとする民間の宇宙ベンチャーが多数誕生し、NASAのアルテミス計画でも、Blue Originなどの民間企業が月着陸船の開発を請け負っている。

世界各国の宇宙機関や民間宇宙ベンチャーが再び月面に目を向けているのは、そこにあると言われているレアアースなどの資源をいち早く発見し、利用しようという目的があるからだ。さらに、ロケット打ち上げ事業や衛星コンステレーション事業、宇宙旅客事業や、月面や小惑星の資源採掘事業など、計画段階を含めれば、宇宙における商業活動は着実に増えている。

アルテミス計画で使用される予定のIntuitive Machinesの大型貨物輸送用月着陸船とHoneybee Roboticsの月面探査車
アルテミス計画で使用される予定のIntuitive Machinesの大型貨物輸送用月着陸船とHoneybee Roboticsの月面探査車(画像:Intuitive Machines)

しかし、依然として宇宙にはまだまだ数多くの謎が残されており、科学者たちによる観測や研究活動を、商業活動が妨げてしまうようなことは避けてほしいところだ。

67年に国連で署名が開放された宇宙条約では、基本的な理念として商業分野・学術分野双方が協調的に宇宙に関わっていくこととされている。だが、この記事で取り上げてきたような問題は宇宙条約ではカバーしきれていないのが実情だ。

その対応の遅れを取り戻すために、国連主導の取り組みから、国際天文学連合(IAU)などによる提言、さらには宇宙機関や企業、科学者らによる実務レベルでの協議なども行われている。だがいずれの動きも決定的なものとは言い難いため、いつかどこかの時点で、時代に即した、新たな協調性ある宇宙利用を推進する世界規模の合意や枠組みが必要になるのではないだろうか。

タニグチ ムネノリ ウェブライター

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たにぐち むねのり / Munenori Taniguchi

電気・ネットワーク技術者として勤務したのち、Engadget 日本版(閉鎖)でウェブライターとして執筆開始。以降、Autoblog 日本版(閉鎖)、Forbes JAPAN、Gadget Gate、Techno Edgeなどでグローバルなトピックを中心に執筆。得意ジャンルはIT・ガジェットからサイエンス、宇宙、自動車・モータースポーツ、音楽・エンタメ、ゲームと幅広い。

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