地球低軌道で交通事故が起きる? 科学者たちが懸念する「人工衛星が多過ぎ」問題

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NASAエイムズ研究センターの天文学者アレハンドロ・ボルラフ氏は「これまで光害のほとんどは都市の灯りや自動車によるものだったが、通信衛星群の台頭により、世界中の天文台に急速に影響が出始めている」「望遠鏡が地球から遠く離れた銀河、惑星、小惑星の謎を解明しようと宇宙を見つめているとき、人工衛星がカメラの前を横切ることがあり、その際に明るい光の痕跡が残ってしまうため、宇宙から届く微弱な信号が見えなくなってしまうことがある」と述べている。

研究者らの試算によると、この影響は地上だけでなく、観測範囲の狭いハッブル宇宙望遠鏡が撮影する画像の約40%、全天サーベイを行うNASAのSPHEREx宇宙望遠鏡が撮影した画像の約96%で、すでに人工衛星が反射する光の影響を受けている可能性があるとされている。

Starlink衛星
プレアデス星団を撮影した写真に映り込むStarlink衛星(画像:NOIRLab / T. Hansen / IAU OAE / Creative Commons)

昨年、アメリカ国立科学財団(NSF)と米エネルギー省は、チリにヴェラ・C・ルービン天文台を稼働させた。また、ヨーロッパ南天天文台 (ESO)も、現在チリで口径39mの超大型望遠鏡(ELT)を、約20億ドルを注ぎ込んで建設中だ。これら最新鋭の大型地上望遠鏡は大集光力・高空間分解能を活かして、生命が存在可能な地球と同等サイズの太陽系外惑星の調査を行うことを計画している。

しかし、上で述べたような人工衛星が夜空を飛び交い続ければ、観測が著しく妨げられる「光害」となり、せっかく建設した新しい天文台も、その力を発揮するのが難しくなるかもしれない。ボルラフ氏によると、19年には地球低軌道に約2000基の人工衛星が存在していたが、現在はその数が約1万5000基に増加している。

そして昨年12月の時点で業界の衛星打ち上げ予定を考慮すると、今後10年間で低軌道上の衛星数は約56万基に達すると予測されていた。これを踏まえると、マスク氏の100万基の衛星による軌道上AIデータセンターの構想が、天文学の分野に与える影響の大きさは計り知れない。

大気汚染やオゾン層破壊の懸念

軌道に配置される人工衛星にも設計寿命があり、それが尽きると役目を終えることになる。

地球低軌道にあるほとんどの衛星は、使用済みになると地球の重力によって高度を落とし、大気圏に再突入して燃え尽きることになる。バレンタイン氏によれば、100万基もの衛星が軌道に配置されると、それらの衛星の寿命が尽きて落下してくる頻度が約3分に1回程度にまで高まることが予測されるという。

現在、古い人工衛星や使い捨てられたロケット本体は大気圏に再突入しているが、そのペースは1日に約3回と言われている。それが、3分に1回になるとどうなるのだろうか。

スペースデブリWT1190F
2015年11月に地球大気圏に再突入した人工物由来とみられるスペースデブリWT1190F(画像:IAC/UAE/NASA/ESA )
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