サナエトークンだけではなかった高市首相の"致命的な死角"、危機管理の拙さで想起される「森元首相えひめ丸事故」の教訓

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昨年11月7日の衆院予算委員会では、立憲民主党の岡田克也議員から存立危機事態についての質問に対し、高市首相は「戦艦を使って、それも武力の行使を含むものであれば、どう考えても存立危機事態になる」と、本来は抑止的だった従来の政府見解を踏み越えた。これにより日中関係は悪化し、中国政府は11月14日に日本への渡航自粛を要請。今年1月6日には、軍民両用(デュアルユース)製品の輸出管理強化を発表した。

高市首相はこの日の午前3時に宿舎を出発し、公邸に入った。6時間後に始まる衆院予算委員会に備え、万全の準備をするためだった。総裁選で勝利した直後に述べた「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」をアピールするチャンスでもあった。

そして日本のために身を粉にして国政に邁進する女性首相と、その足を引っ張ろうとする野党の大物議員という「構図」が作られ、岡田氏は2月の衆院選で落選。現行の小選挙区比例代表並立制が導入された1996年以降、守り続けた衆院三重3区で初めて得票数が10万票を割った。

選挙戦の2月1日には、各党党首がそろったNHK「日曜討論」をドタキャンしたことも話題となった。遊説中に腕を傷め、医務官から治療を受けていたのがその理由だったが、高市首相はその日の午後に愛知県と岐阜県での自民党候補の応援に駆けつけている。

前日には川崎市での応援で高市首相から「円安でホクホク状態」発言が飛び出し、波紋が広がっていた。また、れいわ新選組の大石晃子氏から、日曜討論で旧統一教会との関係を追及されるのを逃げたのではないかとも言われた。

全大臣出席でがっちりディフェンス

基本的質疑
3月2日まで行われた衆院予算委員会の基本的質疑には全大臣が出席し、高市首相に質問が集中することを防ぐフォーメーションを敷いた(写真:時事)

選挙戦ではこれらは大きなミスにはならず、かえって高市人気を高める話題となったが、自民党は高市首相を守るフォーメーションを組みつつある。その一例が、2月28日から3月2日まで3日間にわたって行われた衆院予算委員会の基本的質疑だ。

基本的質疑はこれまで全大臣が出席してきたが、昨年6月に与党側からの要望で、首相と財務相以外の出席は「要求大臣」のみとされた。ところが今国会では、全大臣が参加。その理由は「高市首相に質問が集中することを防ぐため」だという。

神は細部に宿るというが、危機管理は結果オーライで果たせるものではなく、万全の体制を築くことが必要だ。高市首相に対するそうした期待が、高い内閣支持率として表れている。

北条早雲の嫡男で関東で勢力圏を広げ、北条氏の基礎を盤石にした氏綱は「勝って兜の緒を締めよ」の遺訓で知られる。衆院選で大勝した今こそ、高市首相は多数の当選者を出したことにおごることなく、しっかりとした政権の地盤を固めるための正しい選択眼を首相周辺も含めて持つことが必要ではないか。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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