看護師のお金について、今度は学費について考えていきたい。
昨今、家計にかかる学費負担の大きさから、さまざまな奨学金が学生をサポートしているが、看護界にも特有の奨学金制度が存在する。
それが、戦後の看護師不足時に始まり、看護学校を卒業したあとにその病院に就職することが約束された「病院奨学金」だ。人材確保と学費負担軽減という、病院と学生双方にメリットがある制度として全国に広まり、現在も多くの病院で活用されている。
「卒業後にその病院に勤める」という条件を満たせば返還不要になるため、実質給付型奨学金として機能しているこの奨学金を含め、奨学金を利用している看護学生は、2025年で約42%いる。
対して、日本学生支援機構の給付・貸与奨学金の大学生の受給者割合(2022年度の支援実績ベース)は32.3%。年度が違うため、単純に比較することはできないが、看護学生の奨学金利用は相対的に高いことがうかがえる。
「お礼奉公」が足かせに
採用にかかる費用を削減できるうえ、安定的に看護師を確保できる病院にとっても、学費や就職などの不安がなくなり、アルバイトなどに時間を割く必要がなく勉強時間を確保できる学生にとっても、メリットがある病院奨学金だが、問題がないわけではない。
まず、卒業後に「お礼奉公」をするというのは、学生にとって看護学校や大学に入学する時点で就職先を決める「足かせ」になる。
もちろん、「奨学金の貸与を受けた病院に勤務する」と思っていても、それ以上に希望する病院があれば、そこに就職したり、転職したりすることも可能だ。
だが、その際は奨学金の一括返還が求められるのが一般的だ。例えば、毎月5万円の奨学金を3年間貸与された場合、総額は180万円に及ぶ。
自分が進みたいキャリアと異なるなどで、ほかの病院へ就職や転職をするのであれば、一括返還を求められても、それはやむをえないだろう。
だが、職場環境や人間関係の問題、あるいは適正の問題で、その看護現場で働き続けるのが難しい場合、そこで過ごさなければならない数年間はあまりにも長い。
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【病院奨学金をめぐるトラブルとは】
