さらに、これはほかの業種でもいえることなのだと思うが、管理職にキャリアアップすると手当がつかず、昇進したのに給与が低くなるという事象が起こる。
最近の人手不足や物価上昇に対応するため、一般企業の給与や時給はどんどん上がっている。そんななかで、これまでなかった現象も起きている。一般事務の時給より、クリニックの看護師の時給のほうが安くなるという逆転現象だ。
実際、筆者が都内の求人情報を調べたところ、看護師のほうが一般事務よりも200円ほど時給が安かった。
上がらない看護師の給与
では、今後、看護師の給与も一般企業と同様の上り幅で高くなるのだろうか。答えは「NO」だ。
医師や看護師、理学療法士といった専門職の給与は、勤め先の医療機関ごとに異なる。この医療機関の収入の多くは、国が定めた診療報酬によって決まる。だから、簡単には給与を上げられない。
日本看護協会が2024年に実施した実態調査結果によると、2012年と比べて病院勤務の常勤看護師の基本給は6000円しか増えておらず、上昇率は約2.3%にとどまっている。
昨今の物価上昇で光熱費や医薬品、医療資材などの価格が上がり、医療機関の経営は一段と厳しくなっている。日本病院会らの報告によると、赤字経営の病院が2023年には5割以上、2024年には7割に達している。
筆者が知る限り、人件費を増やせず、ボーナスを減らしたり廃止したり、なかには電気代削減のために、職員の部屋の照明の数を減らすなどで対応している病院もある。つまり、看護師の給与を上げる余裕などないのだ。
一生懸命に働いても報われないのであれば、看護師の仕事に見切りをつけ、ほかの道を選ぶ人が増えるのではないか。
連載の1回目に、看護師のなり手不足について紹介したが、新たに看護師が採用できないだけではなく、現職の看護師がどんどん辞めていけば、看護師不足がさらに深刻化するのは目に見えている。病棟を閉鎖したり診療規模を縮小したりする病院が増え、医療崩壊は進んでいくだろう。
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【4割が使う「病院奨学金」の実態】
