<若者よ目を覚ませ!>各党の手取り増加策は的外れ。若年低所得者の手取りは「社会保険料の税方式化」と「所得補給制度」でこそ本当に増える

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

市場所得で測った日本の相対的貧困率の順位は、オーストラリアとスウェーデンに挟まれた16位である。

すなわち、日本の市場所得による貧困率は先進国の中でも低いほうであるのに、政府による所得再分配を経たあとの可処分所得による貧困率が、先進国間で有数の高い国になっていることを表している。これは、日本政府による再分配は、逆進性を含む可能性を示唆している。

日本の貧困層(以下、ワーキングプア)の個人負担の重さを、40歳の単身で年収200万円を得ているギグワーカー(自営業者)を例に示してみよう。

税金より大幅に重い社会保険料の負担

上図が示すように、彼の個人負担全体は、収入の33.5%である。さらに、この個人負担の構成要素を見ると、個人所得税および消費税負担はそれぞれ彼の収入の3.6%と7.4%にすぎないが、社会保険料負担は22.5%となっている。このように、日本では、貧困層に課されている高い率の個人負担が、貧困に追い打ちをかけているのである。

ワーキングプアの可処分所得を大きく改善する方法が2つある。

第1は、基礎年金や健康保険を、すべての北欧諸国と、カナダ、オーストラリアおよびニュージーランドで行われているように、税方式化することである。すなわち、所得水準に無関係に一律の額が給付される基礎年金や健康保険の財源を、保険料ではなく、より累進的な税で賄うことである。

基礎年金(=自営業者など向けの国民年金+被用者向けの厚生年金の1階部分)の保険料をゼロにすると、保険料負担は13兆円減じられるが、それを所得税の累進性強化で賄えば、基礎年金は完全に税方式化でき、低所得者の負担率は大幅に軽減される。

まず、自営業者が所得水準に関わらず払っている一律の国民年金保険料の逆進性が除かれる。低賃金の給与所得者の負担率も、基礎年金部分に対応する年金保険料が不必要になるから、軽減される。

国民全員が加入している健康保険料も同様の方式で廃止すれば、低所得者の可処分所得は上がる(ただし診療のモラルハザードを防ぐため診療費の1割あるいは3割の患者負担は残す)。

こうした効果によって、先の図で例示した所得が200万円のギグワーカーの個人負担率は、保険料負担を累進的な税で賄うことにするだけで、現在の33.5%から9.7%まで下がる。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事