電通を襲った再びの悪夢、「世界進出」の落とし穴 M&A連発の海外で巨額減損、過去最大赤字に
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国内最大の広告グループに、再び悪夢が訪れた。
電通グループは2月14日、2024年12月期決算(国際会計基準)を発表した。収益は1兆4109億円(前期比8.2%増)に拡大した一方、営業損益は1249億円の赤字に転落(前期は453億円の黒字)。純損益は1921億円の赤字(前期は107億円の赤字)と、過去最大の赤字に膨らんだ。
前期までの4カ年中期経営計画も、事業成長・収益性ともに掲げてきた目標は未達に終わった。五十嵐博社長は同日の決算説明会で、「厳しい現状を厳粛に受け止めている」と自省の念を語った。
よみがえった4年前の苦い記憶
大赤字の元凶となったのが、莫大なのれんの減損損失だ。
2013年にイギリスの広告大手イージスを約4000億円で買収して以降、電通グループは海外でM&Aを連発してきた。アメリカの広告業界専門誌『アドエイジ』によると、2023年の世界シェアで電通グループは7位につけ、売上総利益ベースの海外比率も60%に達している。
一方で矢継ぎ早の買収によって、電通グループののれんは2023年末時点で、総額8000億円超に上っていた。昨今の金利上昇から将来見込まれるキャッシュフローの割引率を高く設定し、ITの急激な台頭や世界的な広告大手同士の合併といった海外事業全般のリスクを保守的に織り込んだ結果、アメリカセグメントと、ヨーロッパ・中東・アフリカのセグメントに関連したのれん減損を約2100億円計上することになった。
電通グループが前回、過去最大の赤字に沈んだのは2020年12月期のこと。実はこの時も、赤字の最大の要因は、海外での買収によって膨らんだのれんの巨額減損だった。経営陣の脳裏には、嫌でも当時の苦い記憶がよみがえったことだろう。
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