船舶のサイバーリスク?自律運航にもIT人材不足 セキュリティ機能は要搭載、乗船員教育も課題

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船舶のサイバーリスク
(画像:トシチャン / PIXTA)
イスラエル・パレスチナ紛争をめぐり、イスラエルと対立するイエメンの反政府武装組織フーシ派が中東の紅海周辺で船舶への攻撃を繰り返している。海運は世界の物流を担っており、商船への攻撃となれば多くのビジネスに影響を及ぼしかねない。昨今、あらゆる場面でサイバー攻撃のリスクが叫ばれているが、船舶にはどのような影響があるのだろうか。情報セキュリティ企業ラック 新規事業開発部の竹内正典氏に聞いた。

ドローンを狙ったGPS攻撃の「巻き添え」になる

船舶は、今自分たちが海上のどこにいるのか、周囲に何があるのかをつねに把握しながら航海をしている。目印が少ない海上では、GPSの位置情報をもとに船舶同士の位置関係や方位・針路が電子海図にマッピングされるが、位置情報にはリスクもつきものだ。ことサイバーリスクにおいて、船舶にはどのような脅威があるのか。ラック新規事業開発部担当部長の竹内正典氏は次のように語る。

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「船舶のコンピュータベースのシステムがマルウェア感染するリスクはあるでしょう。ただ、船舶へのサイバー攻撃は、陸上と比較して圧倒的に少ないのが現状です。中東周辺では海賊も少なくありませんが、そうした組織はサイバー攻撃よりも武力行使を仕掛けてきます。現時点で問題になっているのは、紛争地域の航行におけるGPSの撹乱や、電波による妨害攻撃(ジャミング)です」

実際、中東周辺では日常茶飯事的に電波攻撃があり、GPS情報を使った航行はほぼできないと考えたほうがよい。そのため、日本の商船はほとんどが中東を通らず、喜望峰ルートに迂回しているという。

「海賊行為の対策として、自衛隊などの艦船が民間船舶と一緒に航行して護衛することがあります。しかし、これはあくまで物理的な武力行使への対策に限ります。GPS信号は離れた場所から妨害できるため、護衛の意味がないのです。そこで、海運会社は最初から喜望峰ルートを使うことで物流リスクに備えています。これは、コンテナ船などの物流費が上昇している理由の1つでもあります」

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