ウーバーの「遅延急増」現役配達員が語る"実情" 報酬減額で超高額案件が生まれる歪な背景とは
報酬体系の見直しは急務
ウーバー公式サイトの「よくある質問」には、配達員が「配達リクエストを拒否した場合、どうなりますか」という質問に対して、「配達リクエストを受け取った際に、そのリクエストを受ける、無視する、または拒否する、のいずれかを選択することができます。配達リクエストを拒否した場合、通常通り他の配達リクエストを受け取ることができ、評価への影響はありません」という公式見解が記されている。
ウーバー配達員は個人事業主として働いており、ウーバーと雇用契約を結んでいるわけではない。
使用者と労働者といった関係ではなく、だからこそ好きなときに働けるなどの「自由さ」が生まれるわけだが、このスタンスは「配送依頼を受けるか否か」にもそのまま反映されている。配達員はウーバー側から配送依頼があったとき、その仕事を受けるか受けないか、選択権が20秒ほど与えられている。なお拒否した依頼は他の配達員に振られる。
高額報酬以外を受け付けない配達員に、通常単価の仕事を振っている時間は無駄以外の何物でもなくなる。もしマグロ・クジラ案件の「一本釣り」を狙う配達員が増えれば、配達員が決まらない(見つからない)状態が常態化するかもしれない。
なにより深刻な問題は、通常単価の報酬で頑張っている配達員のモチベーションダウンだ。一生懸命に自転車を回し、4~5時間働いて5000円前後を稼いだ後、SNSなどで「クジラを釣ったぜw」などの投稿を目にしたら、頑張って働くことがバカバカしくなるはずだ。
日に日にサービスの質が落ちつつあるように感じるウーバーイーツ。筆者の提案として、例えばマグロやクジラ案件を、真鯛あるいはブリくらいの案件に変える。いつの間にか小アジくらいの大きさにやせ細ってしまった通常単価を、せめて刺身として食べられるくらいのアジの大きさに戻す……いかにして健全な釣り人(配達員)の数を取り戻していくかが、今ウーバーに問われている。
最後に余談だが、前述したクジラ案件の配達のため飲食店へ訪問した際、店員さんが受話器を持ちながら「あ、今ウーバー来ました!」と電話先顧客に謝罪する姿を目撃した。なんでもウーバーを頼んだお客様から「来るのが遅すぎる!」とクレームの電話が入ったらしい。
急いで届けなければという使命感が生まれたが、そのクジラ案件は3件同時配送で、別の飲食店へも商品を取りに行かなければならない。運送会社で3年間「配車係」として働いたことのある私は、ウーバーに就職してこの惨憺たる配車の状況を変えたいと強く願いながら、ウーバーの指示通り自転車のペダルを回して、「お客様の家」ではなく「次の飲食店」を目指した。
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