「起動の速さ」と「直感的な操作」がiPadに切り替えた理由
東京・多摩市にある帝京大学小学校は、1クラス20人以下の少人数制。
1年生からネイティブスピーカーと日本人英語専科指導教員が協力して行う英語教育や、知育玩具を活用したプログラミング教育、豊かな自然環境を生かした里山教育などを実施している。
教育理念として掲げているのは「脱平均、キラッと光る個性の伸長」。
帝京大学グループの理念である「自分流」を踏まえたもので、「なりたい自分」になるため、自分らしさを生かせる課題解決型の教育を実践している。

「だからこそ、個別最適かつ協働的な学びを充実できるICTの活用に早くから力を入れています」とICT主任教諭の小林翔太氏。
文科省がGIGAスクール構想を打ち出したのが2019年(※2)だが、帝京大学小学校はその10年以上前からタブレット端末を授業で活用してきた。
「すべての教室に電子黒板があり、タブレット画面でミラーリングが可能となっていますので、学んだ内容をクラス中で共有したり、意見を交わしながら同時に編集したりもできます。
そうした協働的なプロセスが子どもたちの共感力を養い、多様な価値観を尊重する力につながっていると実感しています」(小林氏)

この成果をさらに高めるために2021年に導入したのがiPadだという。
現在、3年生のクラス担任をしている安達真人氏は次のように説明する。
「iPadは起動が速いので、スピード感を失わず、子どもたちのやる気もそがれることなく授業が続けられます。直感的に操作できるので、子どもたちが自ら使い勝手のいい機能を見つけられるのも理由の1つです」

同校でICT教育を推進するキーパーソンの一人である平澤賢也氏は、「アプリの導入がスムーズになった」と続ける。
「子どもたちの反応を見ながら、必要なアプリをテンポよく導入できるのが魅力です。
本校では、タブレット端末を鉛筆やノートと同じ文房具として捉えていますので、起動の速さや直感的に操作できることも含め、当たり前のように使える学習用具としてiPadはぴったりです」
耐久性が高く、屋外でも気にせず使える保護キーボードケース「Rugged Combo 3」

文房具としてiPadを使ううえでネックなのが、そのままだと落下した場合に壊れやすいということだ。
「教室だけでなく、敷地内の里山での学びでもiPadを使うほか、家にも持ち帰りますので、どうしても落下のリスクがあります。耐久性を高めるため、保護ケースは不可欠でした。また、タイピングは大人になってからもずっと使うスキルなので、キーボードも必要だと考えました」(小林氏)
多数の製品を検討した結果、選んだのはロジクールのiPad用キーボード一体型ケース「Rugged Combo 3」。最大の決め手は、米軍の調達基準であるMIL-STD-810g落下試験基準をクリアし、傷や振動にも強い耐久性だったと小林氏は明かす。

「導入から3年以上が経ちましたが、Rugged Combo 3を装着した状態での破損は1件もないです。子どもたちはかなりの頻度で床に落としていますが、懸念していた画面割れも装着状態では起きていません」(小林氏)
検討段階ではJIS配列かどうかに主眼を置いていたというキーボードも、導入後は耐久性の高さが役立っているという。

「密閉型のキーボードなので、抜けたりゴミが挟まったりすることがないですし、濡れたり砂ぼこりをかぶったりしても拭けばいいので使いやすいですね。季節の植物を撮るといった屋外での学習もしやすくなりました」(平澤氏)
ICT教育というと、サイバー空間でのみ学ぶイメージを抱きがちだが、むしろリアルな自然の中での学びが充実しているのが興味深い。
Rugged Combo 3と同時に導入したロジクールのデジタルペンシル「Crayon」も、使い勝手がいいと3人は口をそろえる。

「デバイス同士を登録し接続設定するペアリングの必要がなく、電源を入れればすぐに使える点、充電も長持ちするのがCrayonを選んだ理由です。充電を忘れてしまう児童もいますが、2分くらい充電するだけで30分程度は使えるのでいいですね。
Rugged Combo 3での収納位置もわかりやすいので、どこにいったかわからなくなったり、紛失してしまったりといったことがほとんどありません。
平たい形状で、授業中にコロコロ転がることがなく、しっかりグリップも利くので当たり前のように子どもたちは使っています」(小林氏)
話す・書くのが苦手な子も、ダイレクトに思いを表現できる

まさに文房具と同様に使われているキーボードとデジタルペンシル。その効果は着実に表れている。
「3年生でタイピングを始めると、4月当初は1行分を入力するのにも15分から20分かかります。
しかし、どの児童もキーボードを使いたいという意欲が非常に高いので、休み時間にタイピングのアプリで練習したり、ブラウザで検索をしたりするんです。そうするとぐんぐん伸びて、半年程度で画面いっぱいに文章を書いても3~5分しかかからないようになります」(安達氏)
帝京大学小学校の2022年12月の調査によると、児童の1分間のタイピング文字数は3年生で62.7文字、6年生は145.3文字だった。一般的な事務職に求められるのが1分間に80文字程度といわれることを踏まえると、すでにかなりのスキルが育まれていることがわかる。
「みんなの前で話すのが苦手な子や、紙に書こうとすると手が止まってしまう子も、キーボードを使うことでスムーズに意見が出せたり、クラスメートと活発なやり取りができたりしています。
道徳の授業などで紙を渡すとあまり書いてくれないのですが、iPadだと400文字くらいはすらすらと書いてくれます。間違ってもすぐ書き直せるし、付け足しも簡単にできるうえ、字の細さや色を自在に変えられるのが魅力なようです」(平澤氏)
iPadに、キーボードやデジタルペンシルというツールを加えたことで、子どもたちが思いや考えていることをダイレクトに表現できるようになり、共有・共創が進んだということだ。

「アウトプットがしやすいことで、人に伝えることを好きになる子が多くなったと感じています。動画やプログラミングで伝えるなど、機能や活用法を自ら見つけて友達と協力しながら計画的に進めている姿を見ると、社会で通用する力が小学校で育まれていることを実感します。
また、自由に書いたり消したりできることで、トライ&エラーが身に付いているとも感じます。できるかできないか迷う前に、まずやってみる、書いてみるといった主体的な行動力を伸ばすのに、使いやすいキーボードとデジタルペンシルは役立っています」(小林氏)
そうやって主体性が増すことで、里山教育や知育玩具を使った教育、起業家教育といった同校の特色ある学びがより生きてくることは間違いない。実際、「iPadだけでキーボードやデジタルペンシルがないと細かいことが書けない」との声も児童から寄せられているという。
今後はARで3Dのオブジェクトも作成予定だという同校。より使いやすさを求めて、Rugged Combo 3の後継であるRugged Combo 4と現在利用中のCrayon(Lightning)の後継である、Crayon(Type-C)の最新版導入もすでに決定している。
「子どもたちが自分らしい生き方を見つけるサポートに力を尽くしたい」とインタビューを締めくくった3名の教員を中心に、同校はこれからもICTの力を教育に生かしていく。
※1 2024年7月29日発表「令和6年度全国学力・学習状況調査」(国立教育政策研究所で実施)の結果
※2 文部科学省が2021年5月に公表した「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備(端末)の進捗状況について(確定値)」によれば、2019年度までに整備済みの自治体は1.2%。2020年度内に端末の納品完了見込みとなった自治体は96.5%だった。
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