VAIOの新モデルが「AI特化」よりも優先したこと 新フラッグシップモデルで示した興味深い選択

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さらに、熱可塑性カーボンと樹脂の一体成型による高剛性ボディの採用など、日本のものづくりの技術を結集。アンテナ部分の見えない美しい仕上がりと、高い強度を両立させている。

製品の意匠にも新たな挑戦を行っている。新色として投入された「ディープエメラルド」は、ビジネスシーンでの高揚感を追求して開発されたカラー。これまでのラインナップにない差し色としての個性を持たせつつ、ビジネス製品としての品位も備えている。さらに10周年を記念した「勝色特別仕様」や、全体を漆黒で統一した「ALL BLACK EDITION」といった特別モデルも用意。PCに触れる時間が増えた現代だからこそ、所有する喜びを感じられるデザインにもこだわった。

「ALL BLACK EDITION」(左)と「勝色特別仕様」(筆者撮影)

「お客様からは、製品自体の信頼性はもちろん、国内設計・開発チームによるきめ細かなサポートを評価いただいています」とVAIO 開発本部 プロダクトセンター プロダクトマネージャーの柴田雄紀氏は説明する。

「PCに愛着を持って使っていただくことは非常に重要です」と柴田氏は強調する。自動車のような嗜好品として大切に扱われることで、結果的に長期使用につながるという考えだ。

新たな価値提供の形

VAIOの選択は、PC市場における新たな価値提供の形を示唆している。最新技術への追従一辺倒ではなく、製品の信頼性とサポート体制を含めた総合的な価値を提供する。それは、持続可能なIT投資のあり方を模索する企業のニーズとも合致している。

PCメーカーとして「新しさ」と「信頼性」のバランスをどう取るか。VAIOの答えは、後者に軸足を置きつつ、実用的な進化を着実に積み重ねていくというものだった。それは、PC市場全体の成熟化を象徴する選択といえるかもしれない。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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