能登地震液状化、傾斜した住宅をどう再建するか 基礎の損傷が復旧を左右、地盤改良が難題

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――被害防止・住宅再建策をお聞きする前に、今回の能登半島地震による液状化被害の状況についてお尋ねします。内灘町やかほく市大崎地区での液状化の特徴として、「側方流動」が挙げられています。これはどのような現象でしょうか。

田村修次/東京工業大学教授。1991年東京工業大学大学院修了。東日本旅客鉄道、科学技術庁・防災科学技術研究所、信州大学工学部、京都大学防災研究所を経て、2014年東京工業大学准教授。2021年同大学教授(筆者撮影)

東日本大震災では、千葉県浦安市などで液状化が起こった。この時は噴砂などの現象が見られた。それに対し今回の能登半島地震では、内灘町、かほく市大崎地区で、噴砂はもとより、地盤が水平方向に大きく変位する側方流動と呼ばれる現象が生じた。浦安市の場合は液状化のみであったのに対して、内灘町やかほく市大崎地区では東の河北潟があった方向へ地盤がメートルのオーダーで流動した。

過去に河北潟の干拓のために、内灘町やかほく市大崎地区で砂を採取するために砂丘を掘り下げたため、地下水位が浅くなった。浅い地下水位が液状化被害を大きくした。逆に地下水位が深いため、砂丘の上の住宅地では液状化は起きなかった。

念入りな地盤改良が必要

――側方流動はどの程度の規模で起きたのでしょうか。

内灘町北部の室地区では、元の場所から約12メートルも変位した住宅があった。これは側方流動によるものと考えられる。なぜ、この場所だけ変位量が大きかったかは不明である。さらなる調査が必要だ。

東日本大震災の際の浦安市の場合は新しい住宅が多く、基礎がしっかりしていたので建物の損傷が軽微で建物全体が傾くケースが多かった。これに対して今般の内灘町やかほく市大崎地区では古い家が多く、側方流動の影響で基礎が壊れて建物が損傷したケースが多数見られた。また、外見上の被害は少ないものの、液状化の影響で建物内部が歪んだ住宅もあった。

――住民の間では先行きが見通せないという声が多く聞かれます。今後、どのように復旧を進めたらよいのでしょうか。

基礎が破壊された住宅は、残念ながら取り壊しは避けられない。基礎がしっかりしていれば、ジャッキアップなどで住宅の傾きを直すことで住み続けることはできる。ただし、もう一度大きな地震が来たら再液状化し、再び傾く可能性がある。そのため、地盤改良などの対策が必要だ。

国や自治体が設けた支援策を活用できる。その場合、液状化層の厚さを調査してから、対策をすべきだ。それをしないで実施した場合、将来再び、被害が発生するおそれもある。

――内灘町およびかほく市大崎地区の液状化被害エリアでは、住宅によって壊れ方が大きく異なっています。修繕による早期の住宅再建を望む人がいる一方で、取り壊した住宅の再建を含む、面的な復旧・復興の必要性も指摘されています。

面的に地盤改良を実施する場合、地域全体の地下水位を避けるなど、かなり大がかりな公共工事が必要になる。土木関係の知見も不可欠だ。課題は多くある。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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