「年内入試」の増加で大きく変わる進路指導

頑張る受験生の姿を目にすると、大人はつい「自分が受験生の頃は」と自分の経験を基にアドバイスしてしまいがちだ。しかし今、大学入試を取り巻く状況は大きく変わっている。

Classi
マーケティング本部 アライアンスチームリーダー
笹原 千奈氏

教育プラットフォーム・Classiを通じて学校教員の働き方支援や授業支援などに携わってきたClassiマーケティング本部 アライアンスチームリーダー 笹原千奈氏は、近年の大学入試をめぐる動きをこう語る。

「大きな変化として挙げられるのが、入試スタイルの多様化です。以前は一般入試を受ける受験生が最も多かったのですが、近年はいわゆる年内入試が一般入試を上回っています」

年内入試とは学校推薦型選抜(指定校制・公募制)と総合型選抜(旧・AO入試)のこと。どちらも、ほぼ年内に入学試験と合格発表が行われることからこう呼ばれている。

文部科学省の調査によれば、2022年度に全国の大学・短期大学で行われた入試のうち、一般選抜(一般入試)は43.3%。一方、学校推薦型選抜は26.9%、総合型選抜は16.8%となっており、年内入試が一般入試を超えているのだ()。

「今、さまざまな入試形態を使って受験生の獲得を目指す大学が増えています。大学はアドミッションポリシーに合致した学生を獲得できる入試形態を採用しているともいえます」

こうした入試スタイルの多様化は、どのような影響を及ぼすのだろうか。

「一般入試が主流だった頃は入学試験で高い点数を取ることが第1でしたから、そのための指導が行われてきました。しかし、学校推薦型選抜では部活動やボランティア、学外活動、興味を持ったテーマの探究など、その生徒が頑張ってきたことが評価されます。つまり、以前なら試験で高い点数を取らなければ合格できなかった大学も選択肢に入れられるようになったのです」

言い換えれば、年内入試ではその生徒の高校生活そのものが問われているということ。年内入試の広がりは、学びにも変化を与えているという。
「学校推薦型選抜や総合型選抜では志望理由を問われます。そのため、生徒はさまざまな学部学科や学問について早い段階から調べるようになっています。探究学習に力を入れる学校が増えており、探究学習の時間を使って自分の将来について考えるほか、大学で学びたい学問について調べるというケースも増えていますね」

今、進路指導に求められる「個別最適化」

大学入試が多様化し、年内入試がクローズアップされる今、進路指導も変化している。

「以前は一般入試を目指す子には大学入学共通テストを中心とした対策を、指定校推薦を目指す子にはそのための対応をすればよかったのですが、今は違います。一口に年内入試と言っても、この生徒には面接の対策、あの生徒には小論文の指導といった具合に、一人ひとりに必要な指導が異なります。また、年内入試を目指しながら万が一に備えて一般入試の準備をする生徒もいますから、進路指導においても個別最適な対応が求められているのです」

さらに、年内入試の広がりにより、教員に求められるのがこれまでとは違う視点だという。

「大学によってアドミッションポリシー、入試の時期や制度、内容は異なりますから、『この子はこの領域なら活躍できるのではないか』『あの子にはこの入試制度が合っているかも』といったところまで考える必要が出てきました。こうした指導をするには、普段から生徒一人ひとりを多面的に捉えることが求められるのです」

とはいえ、膨大な数の大学とその入試制度を教員がすべてチェックし、大勢の生徒を一人ひとり多面的に把握することは現実的にはなかなか難しいだろう。

「自分が進む進路を考え、つかみ取るためには生徒の主体性が重要になります。私たちの元にも先生から『生徒の主体性を伸ばすにはどうすればいいのか』という課題やお悩みが多く寄せられます」

もちろん、学校や教員は手をこまねいているわけではない。学校行事や探究学習を通じて主体性を育むための取り組みをしているほか、教科学習のあり方も変わりつつあるという。

「今までは宿題を山ほど出して『いつまでにこれをやりましょう』と指導する学校や先生も多かったのですが、最近は『自分に必要なことを必要な時期までにやりましょう』という指導が増えています」

一人ひとりの学習と活動の軌跡を蓄積

進路指導の多様化に伴い、求められる学びの個別最適化と、生徒の主体性。こうした学校の課題と取り組みを支えているのがClassiだ。

Classiのメイン画面。たくさんの機能が一覧でき、わかりやすい

「Classiにはプラットフォームとしての機能があるため、それを活用することで先生が多面的に生徒を把握できるようになっています」

加えて、Classiには学習支援機能があり、教員が課題を配信できるだけでなく、AIを使った効率のよい自主学習が可能だ。また、「進研模試/ベネッセ総合学力テスト」の結果を自主学習に生かす仕組みも整っている。そして、これらの学習の軌跡が蓄積されていく。

「生徒一人ひとりのデータがClassi上に蓄積されているため、先生は生徒一人ひとりの現状や目標とのギャップも把握できます。さらにClassi上で探究学習を進められるほか、部活動の記録、学校外でのボランティア体験やコンテスト参加など、教科学習以外に生徒が頑張っている様子を記録し、蓄積することもできます」

毎日の課題や、自主投稿、学年末の振り返りなど、3年間の学びを整理し、まとめることができるポートフォリオ
ポートフォリオは、入学から大学受験までをサポートする

ちなみにClassiには、外部人材を学校に派遣する「複業先生」というサービスや、大学生が探究学習をサポートする「トモノカイ」といった連携オプションがあり、生徒たちのキャリア意識を高めることも可能だという。

とはいえ、教員はこれまでも生徒をさまざまな側面から把握しようとしてきたはず。デジタルツールを活用することでどのようなメリットがもたらされるのだろうか。

「アナログな方法ではどうしても、年度末や提出のタイミングで成果物や結果を把握するという形になります。一方、プラットフォームを使えば、日々の勉強の様子や、レポートを仕上げる過程を生徒と先生がリアルタイムで確認できます。ですから、探究学習のレポートを書いている過程で生徒を具体的に褒めることが可能なのです」

年内入試で注目される「褒める」指導

年内入試が増える今、普段の指導で生徒を褒めることは、非常に重要だと笹原氏は指摘する。

「さまざまな調査などから日本の子どもの自己肯定感の低さが指摘されていますが、年内入試では自己PRが求められます。そのために大事なのが、自己肯定感を高めること。プラットフォームを介することで『毎日コツコツ自主学習を続けているね』『探究学習を頑張っているね』など、テストの点数以外の『生徒の褒めポイント』を先生は見つけやすくなります。生徒自身も自分がやってきたこと、頑張ってきたことを把握しやすいようです。これまで先生の主な仕事は『ティーチング』でしたが、今後はますます『コーチング』が求められるでしょう」

Classi上に蓄積された生徒のポートフォリオは担任だけでなく、教科の教員や部活の顧問、保護者も確認することができる。

「当社では『子どもの無限の可能性を解き放ち学びの形を進化させる』というミッションの下、学力だけでなく、その子のいろいろな強みを発見できるようにと考えています。生徒はたくさんの大人に見守られながら育つもの。Classiを使えば、担任だけでなくいろいろな大人に自分の頑張りを見てもらい、承認欲求を満たすことができます。また、クラス替えがあってもデータを引き継ぐことができます」

みんなで生徒を見守りその可能性を引き出す

生徒を多面的に理解しながらその主体性を引き出し、大学入試へとつなげることが求められる今の学校現場。主体性を伸ばす授業と、その成果を可視化できるClassiの相性はよいそうだ。ある年内入試で合格を勝ち取った生徒の例を挙げてくれた。

「年内入試で重要とされる生徒の主体性ですが、探究学習も、その力を伸ばすのに役立つといわれます。探究学習で自分の興味があるテーマを極めると、生徒はより主体的になるからです。ある学校の生徒は、模試の結果では合格圏外だった大学に年内入試で合格しました。その生徒は探究学習で取り組んだレポートを基に論文を書き、その論文が学外のコンテストでいい成績を収めたため年内入試で提出したところ、見事合格したそうです。これまでは生徒の学外活動を先生が把握することは難しい部分もあったのですが、この生徒は、論文の成果をClassiに書き込み、先生もそれを把握することで、よりスムーズな進路選択や進路指導に結び付けられたということです」

また、Classiは多感な時期にある生徒と教員がコミュニケーションする場という役割も担っている。今の高校生は子どものときからSNSがあるため、改まって個別相談をするより、伝えたいことをClassiに書いておき、先生に見てもらうといったコミュニケーションを好む生徒が多いという。

「普段はあまり発言しない生徒が小まめに学習記録を記入したり、デジタル上なら悩みを相談できるという子どもがいたり。『Classiがコミュニケーションのベースになっている』というお声もいただいています。生徒一人ひとりに必要な学びや進路指導が異なるように、学校によって抱えている課題もその解決策もさまざま。そこで私たちはClassiを提供するだけではなく、学校や先生と一緒に課題解決に取り組むようにしています。今後は集積したデータを個別最適な対応に生かすための方法も提案できたらと考えています」

入試スタイルが多様化し、学びや進路指導にも個別最適化が求められる今の学校現場。教員や保護者が生徒を多面的に把握し、その主体性を育むプラットフォームに求められる役割は、今後さらに増えていくことだろう。

※ 文部科学省 「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」 P3 入学者選抜の実態

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