「当たり前になったIT」が、未来を切り拓く力に
既存システムのオンライン化は急速に進み、生活におけるさまざまな場面でAI(人工知能)の活用が進む昨今、情報技術の重要性を実感している人は多いだろう。だが一方で浮かび上がるのは「なぜプログラミング教育は必要なのか」という本質的な疑問だ。2014年から子どもを対象にしたプログラミングのワークショップを行ってきた利根川裕太氏は、「ITの民主化」が根底にあると指摘する。
「スマートフォンの普及などによって、ITは誰もがその恩恵を受けられる普遍的なものとなりました。その進歩と重要性を多くの人に印象づけたのは、2016年に囲碁のAIプログラムが世界トッププロに勝利したニュースでしょう。AIが人間に追いついたともいえる衝撃的な出来事であり、テクノロジーに詳しくない方においても危機感を抱かせたのではないでしょうか。また、テクノロジーの作り手という意味でも昔は専門技術を持った人しかできなかったプログラミングが、レクチャーすれば子どもでもゲームやAIを使ったツールを作れるようになったりと民主化が進んでいます」
次の学習指導要領でプログラミング教育を必修化すると発表されたのは、2016年4月だった。情報技術の重要性は今を生きる多くの人が実感していることだろう。では、公教育で必修となり、すべての児童生徒が学ぶ意義とはどんな点なのだろうか。
「さまざまな学校を訪れる中で、1人1台端末の導入が進んだことによる好影響もあり、子どもたちがパソコンを自己表現の手段として自由に使っていることがすばらしいと感じています。休み時間に自分たちでゲームを作ったり、他の教科の発表をScratch(無料教育プログラミング言語およびその開発環境)で行うといったことが、現場でも多く見られるようになりました」
そんな子どもたちが大人になった未来、社会で活躍するために必要な知識やスキルは、どのようなものが求められるのだろうか。利根川氏は「未来を自らの手で創造する力」が重要と話す。
「会議で著名なデータサイエンティストの方とご一緒した際に、『未来とは予想するものじゃなく、夢と技術とデザインをかけ合わせて創るもの』とおっしゃっていたことが印象的で、これからの情報教育において大事な観点であることを強く感じています。例えば、ある世界的な電気自動車メーカーは『太陽電池経済への移行促進』という夢に、自分たちが持つ技術やデザイン力をかけ合わせて製品を作り出しました。今では世界中に普及し、その夢の実現は着々と進んでいます。夢・技術・デザインという3つの要素をつなぐ役割や、発想の源泉として重要なのが情報技術。小学生のうちから当たり前にプログラミングを学ぶことで、これまでの常識が一変するような発想を持つ人がたくさん出てくれば、世界はもっと面白いものになると思います」
将来の可能性を広げるカギ「主体性」を育む
未来を創るうえで欠かせないプログラミングの技術。その学びを通して、子どもたちはどう変化し、成長していくのだろうか。
「小学校のプログラミング教育で、私がとくに大事だと考えているのが『学びに向かう力』です。プログラミングは子どもがよりよい人生を送るためのスキル。これを学校や家での暮らしに生かせることに気づき、学びに向かう力と結び付けることが大切です。例えば、私たちがコンピュータサイエンス教育を共同で実施しているある小学校では、6年生が自ら学校の問題を考え、図書館の本の整理にAIを生かせるのではと主体的に試していました。学びに向かう力が育まれ、主体的な学びとなっている好例です」
プログラミングを学ぶことで得られる主体性やスキル。それは将来的な職業や進学先を選ぶ際の選択肢を、より有利に広げてくれるメリットがあると利根川氏は話す。
「職業選択をいつから考えるかというさじ加減は難しいのですが、ITを仕事にするということが現時点でどういう状況にあるか、保護者の認識のアップデートは必要だと感じています。先般政府はデジタル推進人材が今後230万人不足するとの予測を公表しました。IT業界だけでなく、旧来からの企業も“DX”を推進すべくテクノロジーを使いこなせる人材からの需要は高まっています。また待遇面についても、20代から他職種より高いことも魅力の1つ。その影響を受けてか、大学進学においても近年は情報系学部に人気が集まっています。また他の学部学科でも自分でコードを書いてデータ解析を行うことが求められ、2024年度の大学入学共通テストから情報科目が加わることになっています。プログラミングを学ぶことは、進路の選択肢を広げることにもつながるでしょう」
子どもたちが「創造」に夢中になる理由
楽しみながらITスキルを身につけられる習い事として、プログラミング教室で学ぶ子どもも増えている。
「プログラミングを学べる機会が増えるのは望ましいことです。学校での学びだけでは物足りない子が、自分のペースで伸び伸び力を育む場があるのはとても有益なことだと思っています」
子どもたちの「やりたい!」を応援する場所の1つが、エンジニア集団・Preferred Networksと、全国80万人の子どもの個性を伸ばしてきたやる気スイッチグループが運営するプログラミング教育 HALLOだ。
プログラミング教育 HALLOで使われている「Playgram™」は、AIの研究開発で日本をリードするエンジニア集団・Preferred Networksが開発したオリジナル教材だ。
数あるモードの中でも、子どもたちにとくに人気なのがクリエイトモード。3Dグラフィックの空間で想像力を発揮して、大きな建造物や自分の好きな空間を自由に作り上げることができる。アイテム報酬も用意されており、自分が生み出したキャラクターをプログラミングによって自在に動かすことも可能だ。作った作品は生徒同士でシェアし、いいところは自分の作品に取り入れるなど、切磋琢磨できる環境も整えられている。
また、一般的な子ども向けの教材ではビジュアル言語の学習で終わってしまうものも多い。しかし独自に開発されたPlaygramでは、ビジュアル言語とテキストコーディングを相互に行き来できるため、無理なくテキストコーディングを習得できるのも大きなメリットの1つだ。
未来を切り拓く「確固たる力」を育む
自身もPlaygramを体験した利根川氏は、その魅力をこう語る。
「説明を聞いてすばらしいと思ったのは、世界基準のコンピュータサイエンス教育のガイドライン『K-12 Computer Science Framework』を参考に作られている点です。私たちが次の学習指導要領に向けて学校で行っている最新の実証研究でも、このガイドラインに沿って授業を開発しようとしています」
もう1点、利根川氏が着目したのは、プログラミング教育 HALLOでは月に1回、子どもたちが自分の作品を発表する機会があること。
「大人でも月に1回作品を作ってプレゼンを行うのは大変なこと。けれど、やりたい子は夢中で作品を作るでしょう。何より、1年間に12回ものプレゼンを経験した子は、人に伝える力や考える力など、実社会でも生かせるさまざまな力がつきますよね」
プログラミング教育 HALLOがもたらすものは曖昧な学びではなく、子どもたちが未来を切り拓くために必要な「確固たる力」だ。主体性を育み、将来の可能性をより広げるプログラミング教育。その恩恵は、プラスアルファの学びでより大きなものとなるだろう。
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