タレントとインフルエンサーの違いは何だろうか。世界一のインフルエンサーといわれるPewDiePie(ピューディパイ)の活動を見てみよう。スウェーデン出身の30歳はゲームの実況動画で名を上げた。YouTubeのチャンネル登録者数は1億を超える。インスタグラムのフォロワーは2000万を超え、ツイッターもそれに迫る勢いだ。YouTubeとツイッターはほぼ毎日更新され、メインのゲーム実況動画のほか、旅行記などのビデオブログや、結婚式の様子など私生活も披露される。
収入はYouTubeに挿入されるグーグルの広告がメインだろう。記事広告のようにスポンサーの商品を動画やツイートで紹介したり、ドリンクのフレーバーを企業と共同開発するなどのタイアップ企画も手がけたりする。独自のアパレルブランドも展開する。2016年に『フォーブス』が発表した独自調査では、1年で1500万米ドルを稼いだとされる。現在のチャンネル登録者は倍増しているので、単純に収入も倍増しているとすれば、日本円で年に32億円超を稼いでいることになる。
超人は頻出しない
その活動をマーケティング的に分析すると4つの機能がある。情報を伝達するメディア。視聴者を楽しませるコンテンツ制作者。芸能とキャラクターで人を引きつけるタレント。そして、自分を売り込みお金にするプロデューサーだ。
グーグル広告や記事広告では、PewDiePieそのものがメディアになる。多くの人がチャンネルに自ら訪れることで、広告トラフィックが生まれる。タレントはテレビCMに出演し商品のイメージづくりに一役買うが、情報の伝達はメディアであるテレビが担うのと対照的だ。
また、タレントはテレビ番組などコンテンツの重要な一部だが、自分自身ではコンテンツを制作しない。タレントでありながら自らを商品として売り込むことは、できないしやりたくない人が大半だろう。このようにインフルエンサーは、通常何人もの人や企業がチームプレイで実現することを、たった1人で成し遂げる超人だ。
芸能とキャラクターで引きつけるタレントだけでも、スカウトが血眼で探さないと見つからない。人の心を捉えるコンテンツの制作と自身のプロデュースができ、それらをメディアとして持続させる能力。そのうえそれらを併せ持ったタレントが世界中にどれだけ存在するか。コンテンツ制作の手段や表現の場は万人に開かれたが、そんな特異な才能が既存のタレントやメディアを置き換えるほど頻出するわけはない。
アメリカのメディアMediakixが発表する「The Top 25 influencers marketers must know 2019」からトップ10を見てみる。ゲーム実況が3人、美容系のビデオブログが1人、短尺のコメディー動画が6人。ゲーム実況が最たる例だが、VINEというショートビデオ投稿サイトから火がついた短尺コメディー動画にしろ、コスメティックをレビューする美容系ビデオブログにしろ、伝統的なメディアがこれらに価値を見いだすのは難しかっただろう。コンテンツとして見たとき、インフルエンサーは既存のメディアが絶対に踏み入らない領域で勝負をしている。
そう、インフルエンサーは既存のタレントやメディアを補完する存在ではあっても、決してそれに置き換えられるものではないのだ。



















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