新日鉄住金への不安 逆風下で救済に走る
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1株当たり1620円。新日鉄住金が日新製鋼の子会社化で5月13日に正式契約し、2017年2月をメドに実施する株式公開買い付け(TOB)価格が決まった。
日新製鋼のブランドと上場の維持に配慮し、株式取得は全体の51%にとどめる。両社のステンレス生産量が合算で国内シェア5割を超す点など、競争当局の承認も前提だが、子会社化への投資額は約760億円となる。
多額の出資を決めた案件はこれだけではない。
日新製鋼子会社化とともに2月に発表したのが、石油掘削用のシームレスパイプに強い、仏バローレックに対する約3.5億ユーロ(430億円)追加出資による、17年度の持ち分法適用化だった。3月にはブラジル鉄鋼大手、ウジミナスに対する約300億円の増資引き受けを決めている(図1)。これらに投じる金額は合計でざっと1500億円に達する。1000億円を上限に自己株取得も進めている。
こうした“積極投資”を前向きに評価する市場関係者は多いが、不安視する向きも少なくない。その代表が格付け会社だ。
ムーディーズは4月に同社の格付けをA3からBaa1へ引き下げた。中国の過剰生産で鋼材市況が低迷し、新日鉄住金の収益力も低下する中、現金支出で財務体質が悪化するためだ。スタンダード&プアーズも現状BBBの格付けを引き下げる可能性を2月に発表。格下げなら「ジャンク債」一歩手前の水準となる。
ポスコ株売却の意味
新日鉄住金としても座視できなかった。5月16日に韓国ポスコ株の一部売却方針(約300億円捻出)を示している。今やライバルとなった相手との株式持ち合いの意義が薄れた背景もあるが、直接的な理由は格下げを防ぐための財務体質強化にある。
これで当面の格下げは回避された。だが、不安が払拭できたわけではない。問題は相次ぐM&Aは“救済色”が濃いことだ。日新製鋼のケースは、高炉改修投資の重い負担に耐え切れない日新製鋼から半製品供給を要請された結果。バローレックは原油安から2期連続の赤字で、新日鉄住金とのブラジル合弁会社も採算が取れていない。
ウジミナスに至っては、ブラジル景気後退の直撃を受け、15年に1000億円を超す純損失を計上。同社に共同出資する南米の鉄鋼メーカー、テルニウムと14年から経営権をめぐって対立が続いており、資金繰り破綻寸前で何とか増資案をまとめた形だ。
「ウジミナスは増資(6月払い込み)によって、資金繰りのメドがつきつつあり、今後も合理化を続け、17〜18年の黒字復帰を目指す」と新日鉄住金の栄敏治副社長は説明する。ウジミナスにしろ、バローレックにしろ、中長期的な成長期待は十分ある。とはいえ、短期的な収益回復の道は、非常に険しい。
ここにきて、円高という逆風も強まっている。前16年3月期の1ドル=120円強という実績に対し、10円円高になればフロー(輸出入)、ストック(海外資産)で、合わせて200億円以上の減益要因となる。主要顧客が自動車や電機業界など輸出比率が高いことも、「定量化はできないが、ボディブローのように効いてくる」(栄副社長)。
今年に入り、鋼材市況は大底を脱したとはいえ、3月の中国粗鋼生産量が再び過去最高水準に近づくなど、過剰供給構造の解消に長期間を要するのは必至だ。
新日鉄住金は高級鋼に強いということもあり、海外勢に比べれば収益の落ち込みは軽く、M&Aに打って出る財務的余力もある。とはいえ、長引く逆風を乗り切るには、守りを固めるためのコスト競争力強化とリスク管理徹底がますます必要となる。






















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