小中学校と高校で「ねじれ」が生じる可能性がある

官民を問わずDXの重要性が叫ばれる中、その中核を担うIT人材の不足が問題となっている。経済産業省によると、IT人材の需給ギャップは、2030年には最大で79万人に拡大する可能性があり(※1)、ICT教育の基盤固めは喫緊の課題と言えよう。

こうした課題の解決策の1つが「GIGAスクール構想」だ。児童・生徒1人1台の学習用端末と、高速ネットワーク環境などを整えることを目的として政府主導で進められてきたが、構想の対象外である高等学校では整備が進んでいない。

文部科学省が高校における学習者用コンピューターの整備状況について調査したところ、42自治体が1人1台端末の整備を目標にしているが、20年度中に完了したのは12自治体にとどまっており、21年度中が5自治体、21〜24年度が16自治体、9自治体については「検討中」と回答している(※2)。残る5自治体については、整備の方針すら決められていない状況だ。

なぜ、自治体によって対応にばらつきがあるのか。Googleが提供する教育機関向けクラウド型グループウェア「Google Workspace for Education」の導入支援や、学習用に設定した「Chromebook」の販売などを行っているサテライトオフィスの執行役員、岡裕明氏は次のように説明する。

サテライトオフィス 執行役員
岡 裕明氏

「小中学校における通信ネットワークや端末整備の費用について、国公立は全額、私立でも半額を国が負担します。しかし高校の場合、通信ネットワークの整備費用こそ国が負担しますが、肝心の端末整備に関しては、公立も私立も補助金の対象外なんです」

※1 経済産業省「IT人材需給に関する調査」
※2 文部科学省「GIGAスクール構想の最新の状況について」

BYODとBYADのどちらを選ぶべきなのか?

22年度から、小中学校に続いて高校でもプログラミング教育が必修化され、25年1月の大学入学共通テストから、プログラミングを含む新科目「情報」の出題が決定している。

「小中学校では自分用の端末があったのに、さらに高度な内容を学ぶ高校で端末がないという『ねじれ』が生じる可能性があります。こうした状況に危機感を抱いている教員は多く、『今年度中に何とか1人1台端末の環境を整備したい』というご相談をたくさんいただいております」(岡氏)

現実的な対応策として、各教育委員会が視野に入れているのがBYOD(Bring Your Own Device)だ。学校に個人所有の端末を持ち込むことを意味する。

自宅での学習とシームレスにつなげてセットアップの手間がかからないほか、「Google Workspace for Education」などのクラウド型グループウェアも端末を選ばず利用可能だ。比較的低コストかつ容易にICT環境を構築できるため、文科省も「GIGAスクール構想」でBYODの活用を想定している。しかし、実際に運用してみるとメリットばかりではないという。

「いちばんの問題は、同じクラスの中で端末やOSがバラバラになってしまうということです。それぞれ異なるトラブルが発生するので、当然ながら教員の負担は大きくなります。

また、プライベートで利用しているアプリケーションからウイルス感染したり、学校のシステムに不正アクセスされたりと、セキュリティーリスクが高いのは言うまでもないでしょう」(同)

一方、指定された端末を購入する方式のBYAD(Bring Your Assigned Device)に注目が集まっている。端末を統一することでトラブルやセキュリティーへの対応がしやすくなる。また、端末の操作に不慣れな教員が多く、授業の進行がもたつくという話が多い中、少しでも不安な要素を取り除けるのは、大きなメリットだろう。

気になるのは保護者の反応だ。学習用端末は比較的安価だとはいえ、ある程度まとまった費用が必要となる。ところが、保護者の反応は非常に前向きだという。

「入学説明会などで端末の必要性や仕様の説明を行っていますが、非常にすんなりと受け入れてくださっている印象です。ビジネスでPCを使う場面が増えていますし、高校生だとスマートフォンも当たり前の時代ですので、教育現場においても必要不可欠なものだと考えていらっしゃるのではないでしょうか」(同)

家族で使用しているPCを学校で使うことに抵抗を感じ、BYODのために端末を購入する家庭もあるだろう。そう考えると、企業が業務内容に合わせてPCの設定をするように、学校での教育に最適化した端末を購入したほうが合理的だ。

そうした点を保護者に説明したり、端末のキッティングやラベル貼りといったこまごまとした作業を行ったりする手間をまとめて専門業者に委託できるのも、BYADを選択するメリットの1つだろう。

現在、半導体不足もあって端末は枯渇状態にあり、調達に2カ月以上かかることも珍しくないが、サテライトオフィスは最短1カ月程度で配備できるという。

「弊社は、教育現場にできるだけ早くICT環境を整備するお手伝いをすることを社会貢献の一環と位置づけています。配送も自社で行うなど、徹底的なコストカットを実施し、導入の際のサポートも必ずセットでご提供しています」(同)

導入サポートは手間がかかるため、他のベンダーでは有償対応が多いが、同社は無償で実施し、導入後のサポートも格安で行っている。また、同社はクラウド黎明期から幅広い業界のサテライト環境をサポートするなど実績が豊富で、手軽に機能を拡張できるアドオンサービスも自社開発している。アドオンの導入実績は21年6月現在で5万社以上、1200万超のアカウントで、教育現場の場合は通常より低価格で提供している。

サテライトオフィスは、「Chromebook」および「Google Workspace」の導入・運用などのサポートに幅広く対応している

子どもたちがデジタル社会に適応できる教育の必要性

今後も、教育を取り巻く技術や環境は確実に進化していくことが予想され、その都度、フレキシブルに対応していくためには、グループウェアは有償版を利用したほうがいいという。

「例えば、『Google Workspace for Education』は、無償版でもかなり多くのことができます。しかし有償版ならば、より安定した教育基盤として活用することが可能です。

有償版のメリットは大きく2つです。1つはセキュリティー機能が高度になること。進化を続けるオンライン上の脅威から、学校のネットワークやデータを守ることができます。

もう1つは、ビデオ会議ツール『Google Meet』の機能が拡充されること。無償版は100人までですが、250人まで参加できるようになり、ブレイクアウトセッション(小会議室)を作成できます。教室内での班別学習では、机を動かす必要があるため少し時間がかかりますが、オンライン上ですのですぐに分けられます」

また、自動で出欠確認ができ、ログに残せるため教員の負担は大幅に軽減する。効率的かつ高度な授業が展開できるとあって教育現場の関心は高く、21年度がスタートしてから有償版にアップグレードする学校が急増しているという。

「新型コロナウイルスの感染が拡大する前から『Google Workspace for Education』の有償版を使っている学校は、オンライン学習だけではなく、リアルの授業でもうまくその機能を活用しています。そうした学校は、機能ありきではなく試行錯誤する中で自分たちなりの使い方を見つけています。学校や生徒によって使い方は変わってきますが、何かしらの問題にぶつかったとき、有償版が解決してくれることは非常に多いと思います」(同)

社会の状況が目まぐるしく変化している今、教育のICT化に適応できていない学校は多い。当然、実際に運用してみないと理解できない部分もある。そこに多少の差が生じるのは避けられないことだが、そんな中でもできるだけ子どもたちを取り残さず、デジタル社会に適応できるよう教育していく必要がある。

誰も経験したことのないSociety 5.0の時代で子どもたちが生き抜くために何をすればいいのか。迷っている学校は、サテライトオフィスのサポートを受けながら基盤づくりに着手してみてはいかがだろうか。

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サテライトオフィス
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