「現金払いしない人」がお金を使いすぎる理由 カギは代金支払い時に感じる「痛み」にある

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キャッシュレス社会は消費と貯蓄をどう変える?(写真:RossHelen/iStock)
現金、クレジットカード、電子マネーといった支払いの方法で、消費額が変わる? そのカギは支払い時に感じる「痛み」にあるという。『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』の著者、ダン・アリエリーが分析する。

お金を払うと痛みを感じる?

私たちは、なにかの代金を支払うときに精神的苦痛を感じる。これを「出費の痛み」という。お金を手放すことを考えるときに感じる痛みのことだ。神経画像やMRIを用いた研究のおかげで、出費によって身体的苦痛の処理にかかわる脳の部位が実際に刺激されることがわかっている。

痛みを感じると、私たちはまず痛みを和らげ、コントロールしようとする。出費の痛みに対しても同じだ。問題は、出費の痛みを避けるためにとる方法が、長い目で見ればさらに大きな代償を払うようになりがちなことだ。

出費に痛みがあるのだから、苦痛に満ちた出費の決定はやめたほうがいい。なのに私たちは痛みを終わらせる代わりに、痛みを和らげる方法を考案する。クレジットカードや電子マネー、自動引き落としなどだ。これは、症状(痛み)にだけ対処して、病気の原因そのもの(出費)を放置するようなものだ。

出費の痛みを引き起こす要因は、2種類ある。1つは、お金を払うタイミングと、手に入れたものを消費するタイミングの時間差。もう1つは、私たちが出費に向ける注目だ。「出費の痛み=時間差+注目」が、その方程式になる。出費と消費が同時に発生すると、注目度が高いため、痛みが生じ、消費の楽しみは大きく損なわれる。

ではどんな方法で出費の痛みを避けるのか? 痛みを生み出す行動の逆をするのだ。つまり出費と消費の時間差を大きくし、出費への注目を減らせばいい。すると支払いのことを忘れるから、買ったものをもっと楽しむことができるのだ。

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