出光興産経営陣、統合反対の創業家に反論  対立が激化する可能性

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 8月15日、出光興産は創業家が反対している同社と昭和シェル石油との経営統合について、昨年末に出光昭介名誉会長に対して昭和シェルの株式取得について説明し、了解を得ていたことを明らかにした。都内で2015年11月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai/File Photo)

[東京 15日 ロイター] - 昭和シェル石油<5002.T>との経営統合に出光興産<5019.T>の創業家が反対している問題で、経営陣は15日、創業家側からあらかじめ了解を得ていたなどとする見解を発表した。創業家側に対して経営陣が明確に反論をするのは初めてで、対立が今後激化する可能性もある。

「創業家との信頼をベースに話し合いを進めたかったので、言った言わないという議論を避けたかった」ーー。出光興産の関大輔副社長はこれまで反論しなかった理由について記者会見でこう述べた。

昭シェルとの統合をめぐる対立で、創業家に「負けるわけにはいかないが、勝つわけにもいかない」とする出光興産経営陣は、6月の創業家による反対表明以降、表立って出光昭介名誉会長らとの対決姿勢を避けてきた。

ただ、創業家側は8月9日に役員に向けた書簡で、会社が昭シェルとの統合を大株主でもある出光家の「理解と協力を確認することなく進めた」とあらためて批判。これで経営陣の堪忍袋の緒が切れた。

15日に発表した見解で、出光興産は昨年7月の取締役会決議事項であった昭シェル株取得について、昭介氏に事前に説明、了解を得ていたとしている。

また、昨年12月に昭介氏から月岡隆社長に「あなた限りにしてください」と手渡された「株主の見解」についても内容を公表。出光家の合併に対する懸念として同家の持つ株式の希薄化などを挙げていることや、出光興産に同家から取締役を1名参加させることを要望しているとした。

創業家は今月上旬、昭介氏が昭シェルの発行済み株式の0.1%に当たる40万株を市場を通じて取得したことを公表。これにより、出光興産による英蘭系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)<RDSa.L> の持つ昭和シェル株33.3%の取得が著しく困難になったとしている。

出光興産の丹生谷晋経営企画部長はこの日の会見で、統合に反対する昭介氏がTOB(株式公開買い付け)ルールの定める「形式的特別関係者」に当たるか疑義があるとし、関係当局に確認すると述べた。また、その上で、33.3%の取得が不可能となった場合は、RDSと協議をするとした。

出光興産と昭シェルは、出光興産によるRDSの持ち分買取後に株式交換での統合を計画しているが、創業家の対抗策封じとして、出光興産がTOBで昭シェルの株をすべてを取得するという方法もある。ただ、丹生谷部長は「財務的観点からもTOBという選択肢はない」と否定した。

 

 

(浦中 大我)

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