溺れた赤ちゃん写真、難民の悲劇浮き彫りに 過去1週間で少なくとも700人が海で死亡
[ローマ 30日 ロイター] - 先週だけで何百人もの難民が地中海で溺れたとみられるなか、救助隊員の腕に抱かれた溺れた赤ちゃんの写真が30日、人道支援組織によって公開された。この組織は欧州当局に移民の安全な移動経路を確保するよう訴えている。
1歳未満とみられるこの赤ちゃんは27日、木製ボートが転覆した後、海から引き上げられたという。その2日後には、45の遺体がイタリア海軍の艦船によって、同国南部のレッジョ・ディ・カラブリア港に搬送された。この艦船は同じ転覆事故からの生存者135人も救助している。
寝ている赤ちゃんをあやすかのように抱くドイツの救助隊員を写した画像は、リビアとイタリア間で救助ボートを運航するドイツの人道支援組織シー・ウォッチが公開した。同乗していたメディア製作会社が撮影したという。
この救助隊員は、海の中で「腕をいっぱいに広げた、人形のような」赤ちゃんを発見したとメールで語っている。彼はマーティンと名乗り、苗字は明らかにしなかった。
「私は赤ちゃんの前腕をつかみ、まだ生きているかのように、その軽い身体を守ろうと、すぐに腕の中に抱き寄せた。小さな指と腕を宙に伸ばしていた。その明るく人懐っこいが、動かない瞳に、太陽の光が差し込んでいた」
3児の父親であり、音楽療法士を職業とするこの救助隊員は、「自分を慰め、この理解しがたい悲痛な瞬間を表現するために歌い始めた。6時間前にはこの子どもは生きていた」と述べた。
昨年、トルコの海岸に打ち上げられた3歳のシリア難民アイランちゃんの写真と同様に、この写真も2014年初頭から地中海で死亡した8000人以上の人々について、その苦しみを生々しく伝えるものとなった。
シー・ウォッチによると、イタリア海軍に直ちに引き渡されたこの赤ちゃんについての詳細は不明だという。救助隊員も一部服を着たままだった乳児が男か女かも確認することができなかった。また、赤ちゃんの父親や母親が生存者の中にいるかどうかも分かっていない。
ロイターによって確認された乗組員たちの証言によると、シー・ウォッチは、別の子供1人を含む、約25の遺体を回収。シー・ウォッチのチームは全員一致で写真を公開することを決めた。
「こうした悲惨な出来事によって、欧州連合(EU)の政治家がこれ以上の海での死亡を避けようとする呼び掛けは、単なるリップサービス以外の何物でもないことが、現場の支援団体には明白だ」。シー・ウォッチは写真とともに公開した英文の声明文でこう述べた。
「このような写真を見たくないのであれば、彼らを生み出すことを止めなければならない」。シー・ウォッチはこう述べ、欧州は難民に対して安全で法的に保証された移動経路を確保することで、密入国によるさらなる悲劇を無くすよう求めた。
リビアからイタリアへ渡航した難民の数は、過去1週間で今年最多を記録しており、少なくとも700人が海で死亡した、と国連の難民支援組織は29日明らかにしている。
赤ちゃんを乗せたボートは26日遅くリビアのサブラタ近くの港を出発し、海路を進んだことが、国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」が実施した生存者からの聴き取り調査で明らかになった。生存者によると、ボートが転覆したとき、何百人が乗船していたという。
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