【4月27日15:30追記】初出時のランキングは平成26年度延滞率を元に作成されたものでしたので、最新の平成27年度延滞率を元にした情報にアップデートしました(平成26年度延滞率はカッコ内に表記)。それに伴い本文も一部変更しております。
日本の大学教育において、課題のひとつとなっている奨学金の延滞問題。その大学別の延滞率が4月19日、日本学生支援機構のホームページ上で公開された。
2016年の段階では、日本学生支援機構は「大学別の順位を明らかにする予定」と説明していたが、「不当な序列化につながる」という大学側の反発に配慮したのか、学校ごとに個別に検索しなければデータを閲覧できない形で公表されている。そこで、東洋経済オンライン編集部では日本学生支援機構が公表した情報をもとに可能な範囲で全体の集計・整理を試み、独自に大学別の奨学金延滞率ランキングを作成した。
ここでいう「延滞率」とは、分母を2014年度末までの5年間に返還義務が生じた貸与終了者、分子を2015年度末時点で 3カ月以上延滞している者として算出する。つまり貸与終了者に占める3カ月以上延滞者の割合を示している。ちなみに、このデータは本来、2016年度の夏ごろ以降に公表される予定だったが、遅れに遅れて4月19日の公開となった。
2015年度末の延滞額総計は約880億円
日本学生支援機構の資料によると、2015年度末時点の奨学金の延滞額は約880億円にものぼる。この延滞金が返還されなければ、国民の負担による補填や、将来世代への不利益に繋がりかねない。
では、その責任を負うべきは誰なのか。一義的には借りた学生であることは言うまでもない。しかし、奨学金制度による受益者は、学生だけではない。それによって授業料を受け取る大学も受益者だ。つまり、大学も延滞問題の責任の一端を担っていると考えるのが自然だろう。
そこで日本学生支援機構は、これまでも個別の大学に延滞率を伝えることで危機感醸成を目指してきた。ところが、遠藤勝裕理事長は2016年1月のインタビュー(奨学金「貧困問題」、最大の責任者は誰なのか)で、大学の危機感が薄いと指摘。各大学の延滞率を公開する方針を打ち明けていた。
大学の奨学金延滞率は平均1.3%。1位は山口県萩市の私立大学である至誠館大学で、9.93%と1割に迫る。また、5%以上の大学は7校に上った。ただ、2014年度(平成26年度)に比べると、全体として改善傾向が見える。
延滞率の高さが目立つのが、やはり地方の私立大学だ。都市部と比較して、学生が就職してからの給与水準などに大きく影響を受けていることがうかがえる。一方で、国公立大学は地域にかかわらずランキング下位に固まっており、堅実さを見せている。
日本学生支援機構は、ホームページで「ここで明らかになる情報は、各学校の一側面を表しているもので、状況を相対的に比較できるものではないことにご注意ください」と明記している。まさにその通りで、このランキングでの順位が、そのまま大学の教育能力の評価に直結するわけではない。貸与終了者数の母数が少ないがゆえに延滞率の数字が大きくなっている小規模な大学があることにも考慮が必要だ。ただ、高校生や保護者にとっては、”失敗しない大学選び”をするための重要な判断材料になることは間違いない。
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