クリントン受託演説は米政治文化の教科書だ 党大会最終日の歴史的演説の邦訳全文を掲載

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米ペンシルベニア州での民主党全国大会で7月26日、ヒラリー・クリントン前国務長官が大統領候補に正式指名された。党大会の最後を飾る受託演説において、クリントン氏は、おそらく歴史に残るであろう、名演説を披露した。
トランプ氏については「彼はわれわれを他国から引き離し、お互いを分断しようと望んでいる」と指摘し、強く批判。国内外をめぐる「脅威と混乱」に対し、正しい選択をしていけるのは自分であることを強調したが、全米の聴衆を惹きつけたのはこの部分ではない。女性として主要政党の候補になったこと、そして大統領になることによって、ガラスの天井は壊され、それによる恩恵はすべての女性が受ける、とした部分だ。「米国の障壁が崩れ去る際には必ず、すべての人たちにとっての道が開かれるからです。天井がなければ、空は果てしないのです」。
今回の演説は、米国政治文化を知るための最新・最良の「教科書」といえる。非常に長い演説ではあるが、スピーチに重きを置いた米国政治文化を堪能してほしい。
以下の本文は、スピーチ全文の翻訳。パソコンで動画を再生する際には、「画面を固定」を押して、下にスクロールをしながら聞いていくと便利だ。

 

本当に、本当にありがとうございます!素晴らしい歓迎をありがとうございます! 素晴らしい党大会をありがとうございます。

そして、チェルシー、ありがとう。あなたの母であること、そしてあなたがこんなに素敵な女性に育ったことを本当に誇りに思います。マークを私たちの家族に招き入れてくれて、シャーロットとエイダンを産んでくれてありがとう。

それからビル、45年前に法律図書館で私たちが始めたあの会話は、今も力強く続いています。知っているでしょう。あの会話は喜びに満ちた良い時代にも、試されるような辛い時代にも続いていました。途中で私が口を挟むこともありました。

火曜日の夜は、今でもあなたが、私の「最高説明責任者」の任務に就いている姿を見ることができて、とても嬉しかったです。家族のほかのメンバー、生涯の友人たちにも感謝しています。

オバマ大統領の友情で成長できた

民主党大会で大統領候補に指名されたヒラリー・クリントン前国務長官(写真: ロイター/Lucas Jackson)

力を尽くし私たちを今夜ここに導いてくれた皆さん、今週、この選挙戦に参加してくれた皆さん、ありがとうございます。なんと素晴らしい1週間だったのでしょう! 私たちは、希望から来た男ビル・クリントン、そして希望の男バラク・オバマのスピーチを聞きました。米国はオバマ大統領のリーダーシップでより強くなり、私は彼の友情によって成長することができました。

素晴らしい唯一無二の副大統領ジョー・バイデンのスピーチもありました。彼は寛大な心で働く人々への党の責務について話しました。それは彼だけができることです。

そしてミシェル・オバマ大統領夫人は、子どもたちが見ているのだということを思い出させてくれました。私たちが選ぶ大統領は、彼らにとっての大統領になるのです。

ティム・ケイン氏を知って間もない人たちは、なぜバージニア州の人々が、彼を市議会から市長へ、知事へ、そして今は上院議員へと推し続けているのかすぐに理解できるでしょう。彼は全国民が誇りに思うような副大統領になるでしょう。

そしてバーニー・サンダース氏にお礼を言わせてください。バーニー、あなたの選挙戦は多数の国民、特に予備選に心と魂を捧げてくれた若者たちを元気づけました。あなたは経済と社会正義の問題を、本来あるべき形で前面、そして中心に据えました。

それから、ここにいる、そして全国の支持者の方々に、知っていていただきたいことがあります。皆さんの声は私に届いています。皆さんの問題は私の問題でもあります。

この国は皆さんのアイデアとエネルギー、情熱を必要としています。それだけが革新的な綱領を、米国の真の改革へと変えることができるのです。私たちは一緒にそれを書きました。今こそ外に出て、それを一緒に実現しましょう。

友人の皆さん、私たちは国家発祥の地、フィラデルフィアにやって来ました。240年前にこの町で起きた出来事から、今もなお学ぶことがあるからです。私たちは皆その物語を知っていますが、たいてい、どのようにして起きたかばかりに注目し、その出来事が全く書かれないまま終わってしまう一歩手前まで行っていたことをほとんど知りません。

手に負えない13の植民地の代表が、ちょうどここからすぐの場所で会談したとき、王への忠誠を守りたいと望む者がいた一方、王を刺し殺したいと望む者がいました。

米国は再び、審判のときを迎えている

革命はどちらに転ぶか分かりませんでした。しかし、彼らはどうにかして互いの声に耳を傾け、妥協し、共通の目的を見つけ始めました。フィラデルフィアを去るころには、彼らは、自身を1つの国家として認識し始めていました。その認識が王に立ち向かうことを可能にしたのです。勇気がいることでしたが、彼らは勇気を持っていました。この国の建国の父たちは、協力し合うとより強くなれるという、不朽の真実を受け入れたのです。

今再び、米国は審判のときを迎えています。力強い勢力が私たちを分裂させようと脅かしています。信頼と尊敬の絆がほつれつつあります。そして建国の父たちのときと同様、ここに保証はありません。本当に私たち次第です。私たちは一緒に戦うため、力を合わせて立ち上がるかどうか決めなければなりません。

この国のモットーはエ・プルリブス・ウヌム(多数でできた1つ) です。私たちはそのモットーに忠実であり続けられるのでしょうか?

私たちは先週の党大会で、ドナルド・トランプ氏の答えを聞きました。彼は諸外国から私たちを、また、私たち同士を分断したいのです。今日の世界危機により、私たちが未来への無限の希望を見失うことに賭けているのです。彼は共和党を「米国の夜明け」から「米国の真夜中」へと運んでしまいました。彼は私たちが未来を恐れ、互いを恐れるよう望んでいます。

知っていますか? 偉大な民主党大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトは、80年以上前、今よりはるかに危険な時代に、トランプ氏への完璧かつ痛烈な非難を述べていました。「私たちが唯一恐れるべきものは、恐れそのものである」と。

私たちは今、この国が何に直面しているのか、明確に把握しています。しかし、恐れてはいません。これまでずっとそうしてきたように、私たちは試練に立ち向かいます。壁は作りません。その代わり、良い仕事を望む誰もが手に入れられる経済を作ります。そして、この国の経済にすでに貢献してくれている何百万もの移民が、市民権を得られる道を切り開きます。

私たちは宗教を禁止しません。全国民や同盟国と協力して、テロと戦い、敗北させます。

やるべきことが多くあることは分かっています。経済危機以来、あまりにも多くの人々が昇給を果たしていません。あまりにも不平等で、社会は柔軟性に欠け、ワシントンはあまりに停滞しています。国内外にはあまりにも多くの脅威が存在しています。

米国の強みに目を向けよう

しかし、これらの試練に立ち向かうため、私たち米国民が持っている強みに一瞬でも目を向けてください。

この国には、世界で最も大胆で多様な人々がいます。

この国には、かつてないほど寛容で寛大な若者たちがいます。

この国には、最強の軍があり、最も革新的な起業家たちがいます。そして自由と平等、正義と機会という不朽の価値観。これらの言葉と共にあることを、誇りに思うべきです。

このことをお伝えせねばなりません。私は国務長官として112の国を訪問しました。人々はこれらの言葉を聞くと、米国を思い浮かべるのです。 

だから私たちの国が弱いなどと誰にも言わせてはなりません。弱くありません。持つべきものを持っていないなどと言わせてはなりません。持っています。

何よりも「私だけが解決できる」などと言う人のことを信用してはなりません。そうです、これは、クリーブランドでドナルド・トランプ氏が述べた実際の言葉です。私たち全員に警鐘を鳴らしたのでしょう。

本当でしょうか? 彼だけが解決できる?彼は忘れていませんか?危機に立ち向かう最前線の兵士や警察官、消防士たちを。私たちの世話をしてくれる医者や看護師たちを。人生を変えてくれる教師たちを。どんな事態にも可能性を見出す起業家たちを。暴力により子供を亡くし、それでも他の子供の安全を守るため運動を続ける母親たちを。彼は私たち1人1人を忘れています。

米国人は「私だけが解決できる」 とは言いません。「皆で一緒に解決しよう!」 と言うのです。

思い出してください。建国の父たちが革命を起こし、憲法を書いたからこそ、米国は1人が全権力を握るような国家にならずに済んだのです。

240年後の現在、私たちは依然として互いを信じ合っています。ダラスでの出来事を思い出してください。5人の勇敢な警察官の暗殺後、デイビッド・ブラウン警察署長は地域の人々に、警察を支えてくれるよう、そして、協力してくれるよう呼びかけました。人々がどのように応えたか知っていますか?わずか12日間で約500人が申し出たのです。

米国人は助けを求められると、このようにして応えるのです。

「村中みんなで」の国

20年前、私は「村中みんなで (原題"It Takes a Village") 」という本を書きました。多くの人がタイトルを見て、何を意味するのか尋ねました。私が意味したのは、家族を養ったり、起業したり、地域社会を癒したり、国を高みに引き上げたりすることを、誰の助けもなしに1人でできる人はいない、ということです。

米国は私たち1人1人が、エネルギーと才能、野心を傾けることを求めています。この国をさらに良く、さらに強くするためです。私は心から信じています。「結束すればより強くなる」というのはただの歴史の教訓でも、ただの選挙戦のスローガンでもありません。これまで常に国の指針であり続けてきたもので、これからの未来の指針となるものです。

米国はトップの人々だけではなく、全ての人にとって経済が機能する国です。どこにいても良い仕事を得ることができ、良い学校に子どもを通わせられる国。すべての子どもたちが夢を見て、夢を叶えることができる国。家族が強く地域社会が安全な国。そうです、愛が憎しみに勝る国です。

そのような国のために私たちは戦っています。そのような未来に向かい努力しています。だから友人の皆さん、謙虚さ、決意、米国の希望に対する無限の自信を胸に、私はアメリカ合衆国大統領候補の指名を受託します。

この演壇に立つ人々の中には、ときどき、 ほんとうにときどき、全国規模の舞台が初めてだという人がいます。ご存知の通り、私はそのような人々とは違います。大統領夫人になり、素晴らしきニューヨーク州の上院議員を8年間務め、その後、国務長官として皆さんを代表して参りました。

しかし肩書きは、私が何をやってきたかを伝えるばかりで、なぜそれを行ってきたのかを伝えてはくれません。本当のことを言えば、公的役務にあった数年間はずっと、「公務」より「実務」の方が私には簡単でした。

トランプ氏とはまったく違う出自

人々の中には私をどのように評価すべきか分からない人がいることを、理解しています。

だからお教えします。私の家族には、大きなビルに名を冠するような人間はいません。そのような家庭に生まれました。多くの米国人家族と同様、私の家族は、違う意味で「建設者」でした。彼らは、子どもたちのため、より良い生活とより良い未来を築きました。自分たちが持っていた道具、神が授けたもの、米国での生活がくれたもの全てを使って築きました。

私の祖父は50年間、スクラントンにあるレース工場で働きました。自分が持っているものをすべて捧げれば、子どもたちが、自分よりも良い人生を送れるようになると信じていました。そして、それは正しかったのです。

私の父ヒューは大学に進み、ペンシルベニア州立大学でフットボールをして、真珠湾攻撃の後に海軍に入隊しました。戦争が終わると、服飾用の布を印刷する小さな事業を始めました。私は父が何時間もシルクスクリーンに向かっていたことを覚えています。父は、兄弟と私に、自分が人生で手にすることのなかった機会を与えてくれようとしました。そしてそれは実現しました。

私の母ドロシーは幼いとき両親に見捨てられました。14歳でメイドとして自活することになりましたが、彼女を救ったのはほかの人たちの親切心です。小学1年生の頃、昼食に食べるものを彼女が持っていないのを見た教師が、1年間ずっと、余った食べ物を持ってきて分けてくれました。

母の学びは数年後私に受け継がれ、今でも心の中に留まっています。「1人で生きられる人はいない。お互いの面倒を見て、励まし合わなければならない」。母はまた、メソジスト信仰の言葉を私に覚えさせました。「あなたにできる全ての方法で、できる限り長く、できる限りの人々に、できるだけ良いことをしなさい」。

そこで私は児童擁護基金で働くようになりました。マサチューセッツ州ニューベッドフォードで、登校することを拒否された障害児のために1軒1軒を訪問しました。車椅子の少女に、彼女の家の小さな裏口で会ったことを覚えています。彼女はどれほど学校に行きたいか、私に話してくれました。その当時、それは不可能だったのです。私は母のことや、彼女が幼少時代に経験したことを考えるのを止められませんでした。

このことから、単に思いやるだけでは十分でないことをはっきりと理解しました。真に前に進むには、心と法律の両方を変えなければならないのです。理解と行動の両方が必要なのです。

そこで私たちは、全ての障害を持つ子どもたちが教育を受けられるよう議会を説得するため、事実を調べ、連合をつくりました。これはすごいアイデアですよね? 全ての障害児には、学校に通う権利があるのです。

でも、あなたならどのようにアイデアを形にしますか?1年1年、段階を踏みながら、ときには1軒1軒を回って実現させるのです。アナスタシア・ソモサさんが何百万人もの若者の声をこのステージで代弁する姿を見たとき、私の胸は高鳴りました。なぜなら、彼女が教育を受けられるよう法律を変えたのは私たちだからです。

私は、ミシガン州フリントの飲料水に含まれる鉛の正確な数値、アイオワ州の精神衛生施設の数、皆さんの処方薬にかかる代金まで、政策の細部を突き詰めます。自分の子供や家族に関わることであれば、単なる細部ではなく重要なことだからです。そして、皆さんの大統領にとっても重要なことであるべきです。

この4日間の大会で、皆さんは私にインスピレーションを与えてくれた人たちをご覧になったことでしょう。私を人生の一部として向かい入れ、また私の一部となっている人々です。たとえばライアン・ムーアさんやローレン・マニングさん。彼らは、火曜の夜に体験談を語ってくれました。

ホワイトハウスに声と物語を運ぶ

私が初めてライアンに会ったのは彼が7歳のときです。彼は40ポンド(約18キロ) もある全身コルセットに身を固めていました。彼を持ち上げようとしたときにそれが分かりました。ライアンのような子供たちがいたからこそ、私たちは国民皆保険制度の計画が失敗したときも前に進むことを諦めず、この国の800万人の子供を支える児童健康保険プログラムを作成するため両党の指導者と協力し続けることができたのです。

優雅に力強くここに立っていたローレン・マニングさんは、9.11で重傷を負いました。彼女や映画スターのデビー・セント・ジョンさん、ジョン・ドーランさん、ジョー・スウィーニーさん、そして全ての犠牲者と生存者への思いから、私は9.11の遺族とグラウントゼロで病気になった救急員たちのため、上院で精一杯働き続けられたのです。

9.11の10年後、オバマ大統領がついにオサマ・ビン・ラディンを罰する勇気ある決断を下したとき、私はホワイトハウスで、ローレンやデビー、そのほかのすべての人たちのことを思っていました。

そしてこの選挙戦では、変革に向かって戦い続けるための勇気をくれる多くの人たちに出会いました。皆さんの助けをお借りして、私はホワイトハウスにあなたたちの声と物語を運びます。

また皆さんは、私たちの選挙戦を支援してくれている共和党員と無所属の人々の声を聞いたはずです。私に投票してくれる人、投票しない人、苦しんでいる人、努力している人、成功している人、民主党員、共和党員、無所属の人たち。私はこうしたすべての人たちのための大統領になります。米国が1つになるために。

今夜、私たちはより完璧に1つになるため国家全体で行進し、金字塔を打ち建てました。主要政党が初めて、大統領候補に女性を指名したのです!

母の娘として、私の娘の母としてここに立つこと、この日が来たことをとても喜ばしく思います。孫を持つ女性、少女、その間にいる年代のすべての人のために嬉しく思います。少年と男性のためにも喜ばしく思います。なぜなら米国の障壁が崩れ去る際には必ず、すべての人たちにとっての道が開かれるからです。天井がなければ、空は果てしないのです。

米国中にいる1億6100万人の女性や少女の一人一人が、ふさわしい機会を得られるようになるまで、歩み続けましょう。でも今夜私たちが築いた歴史よりも重要なのは、これから私たちが一緒につくる歴史です。まずは、この国で働く人々がさらに成功し、安定した生活を送る手助けから始めましょう。

オバマ政権の功績は十分に認められていない

オバマ大統領とバイデン副大統領は、私たちの人生で最悪の経済危機から私たちを救ってくれました。しかしその功績が十分認められているとは思えません。この国の経済は彼らが就任した当初より、ずっと強くなりました。民間部門では1500万人近い新規雇用が創出され、健康保険を持つ国民は2000万人増えました。自動車産業は過去最高の年を迎えたばかりです。

これは真の進歩です。しかし誰一人として、現状に満足できてはいません。不況のずいぶん前に起こり、回復期にもずっと消えなかった根深い問題に、私たちは依然として直面しています。

私は全国を回り、働く家族と対話してきました。経済政策が自分たちに良い影響を与えていないと感じている多くの人々の話を聞きました。イライラしていたり、激怒している人すらいます。

知っていますか? それが正しいのです。経済は本来の姿で機能していないのです。米国人は懸命に働くことを厭いません。しかし今、多くの人々が自分たちの仕事に対して払われる敬意が薄まっていると感じています。自分たちに対する敬意もです。

私たち民主党は、働く人々の党です。皆さんのことを理解しようと、助けになろうとしています。しかしそれを示すための十分な仕事がまだ出来ていません。だから今夜、より良い生活を送るために、私たちがどのようにして国民に力を送るのか、話したいと思います。

大統領としての私の最も大きな使命は、米国でさらに多くの賃金上昇を伴う雇用や機会を生み出すことです。

就任初日から最後の日まで変わりません。特に、長い間除外され取り残されてきた場所で。スラム街から小さな町まで。先住民の地域から石炭産業がさかんな地域まで。依存症によって荒廃した地域から、工場閉鎖によって空洞化している地域まで。

私は確信しています。米国が繁栄するときは、中産階級が繁栄するときだと確信しています。民主主義があるべき形で機能していないから、経済があるべき形で機能していないのだと確信しています。

だから私たちは、政治からカネを切り離し、投票権を制限するのではなく拡大させる人を最高裁判事に任命しなければならないのです。必要であれば、シチズンズ・ユナイテッド判決を覆すための憲法修正案を通します!

多くの恩恵を国から受けてきた米国企業は、愛国心をもって恩返しすべきだと確信しています。多くの企業がそうしていますが、そうではない企業が多すぎます。片方の手で税制優遇措置を受け取り、もう片方の手で解雇通知を配布するのは間違っています。私はウォールストリートがメインストリートをもう一度台無しにすることを決して許してはならないと確信しています。

そして科学を信じています! 気候変動は現実であり、十分な賃金のクリーンエネルギーの雇用を多く生み出しつつ、地球を救うことができると確信しています。

私は経済に貢献する勤勉な数百万人の移民を追い出そうとすることは自滅的で非人道的だと確信しています。包括的な移民改革は、この国の経済を成長させ、家族が一緒にいられるようにするのです。これをなすのは正しいことです。 

信念持つ人は選挙戦に参加を

皆さんがどの党に属していても、全くの無所属であっても、これらの信念に共感するのであれば、選挙戦にすでに加わっています。

企業は幹部へのボーナスを増やすのではなく、利益を共有すべきだと確信している人は、私たちに加わってください。

最低賃金と生活賃金は同じであるべきで、フルタイムで働く人が貧困の中で子どもを育てるなどということがあってはなりません。それを確信している人は、私たちに加わってください。

米国のすべての男性、女性、子供は、支払い可能な額の健康保険に加入する権利があります。それを確信している人は、私たちに加わってください。

不公平な貿易協定を拒否して、中国に立ち向かい、鉄鋼業や自動車産業、国内で生まれた製造業の従事者を支援すべきです。それを確信している人は、私たちに加わってください。

社会保障を拡大し、自身の健康問題について決断を下す女性の権利を守らねばなりません。それを確信している人は、私たちに加わってください。

そして、そうです。働く母が、妻が、姉妹が、娘が平等な賃金を得るに相応しいと確信している人は、私たちに加わってください。

私たちはこのようにして、この国の経済がトップにいる人々だけではなく、国民全員にとって機能するようにします。

ドナルド・トランプ氏は党大会で、このようなことを何も言いませんでしたよね。70分強も話していたのに奇妙なものでした。

そして彼は何の解決策も示しませんでした。でも知っていますよね、彼がこれらを信じていないことを。計画について話すのが嫌なのも不思議ではありません。お気づきの方もいるように、私は自分の計画について話をすることが大好きです。

私は最初の100日間で両党と協力し、給料の良い新たな仕事への、第二次世界大戦後最大の投資法案を通します。製造業、クリーンエネルギー、テクノロジー、イノベーション、小企業とインフラストラクチャーなどの仕事です。インフラに今投資すれば、今日の雇用を生み出すだけではなく、未来の雇用への基礎をつくることになります。そして若者たちがそれらの仕事の準備をする、その方法も変えます。

中産階級の学費負担を軽減

バーニー・サンダース氏と私は、中産階級のための大学の学費を無料にし、全ての人が借金を抱えないようにするため協力します。すでに学生ローンを抱えている何百万もの人々を解放します。ドナルド・トランプ氏が借金を無視できるのに、学生や家族が借金の借り換えができないというのは正当ではありません。

大学は重要です。でも4年制の大学を出ることが、良い仕事を得るための唯一の道であってはならないのです。これは私たちが頻繁には口にしないことですが。

私たちは、より多くの人がスキルを得たり、仕事のやり方を覚えたりして良い生活を送れるよう手助けをします。

私の父の会社のような中小企業を後押しし、もっと楽に融資を得られるようにします。あまりに多くの夢が多くの銀行の駐車場で消えてなくなりました。米国では、夢を見られるのであれば、実現できるはずなのです。

私たちは家庭と仕事の両立を助けます。支払える額の児童福祉、有給家族休暇のために戦うことが「女性のカード」を利用していることになるのであれば、私もそれを使わせてもらいます。

ほかにも申し上げることがあります。私たちはこのような投資をするだけではなく、1つ1つに対してお金を支払います。どうやって? ウォール街、企業、ずば抜けて裕福な人たちには、公平な税を負担してもらいます。彼らの成功に腹をたてているからではありません。90%以上の利益が最上位の1%の手に渡ってしまうからです。私たちはそのおカネを追跡します。

そして、企業が税優遇措置を受けているのに、海外に雇用を移すのであれば、私たちは彼らに返金させ、そのお金を本来あるべき形で使います。この国で雇用をつくるのです。

皆さんの中には自宅で座っていて、こう考えるたちもいることでしょう。「すべて聞こえは良いけど、どうやってそれを実現するというの? ワシントンのこう着状態をどうやって打破するの?」

そうですね、私の実績を見てください。私は法律案や条約案を通し、多くの人々を助ける新しいプログラムを立ち上げるため、議会を走り回ってきました。もしもチャンスを頂けるならば、大統領になってもやることは変わりません。

それでもこう考える人もいるでしょう。「トランプ氏は実業家だし、経済に精通しているはずだ」。では、もう少し詳しく見てみましょうか。ここから60マイル(約96キロ) 離れたアトランティックシティに行くと、ドナルド・トランプ氏が支払いを拒否したせいで、全てを失った土建業者や中小企業が見受けられます。

ここで、大統領が昨晩言ったことを思い出しましょう。ブーイングではなく、投票をしましょう!

トランプ氏は労働者に貧乏くじを引かせた

考えてみましょう。仕事をしてお金が必要だった人たちは、トランプ氏が支払うことができなかったからではなく、単に支払わないから、身動きが取れなくなっているのです。彼が大統領になるため謳っている宣伝文句を知っていますか? 「彼を信じれば、大もうけできる」です。これこそ、あの全ての中小企業に対して彼が使った文句です。そしてトランプ氏は立ち去り、働く人々に貧乏くじを引かせたのです。

彼は米国を最優先するという大それた計画についても話していました。ええ、説明してほしいものです。「米国最優先」のどの部分を理由として、彼はトランプブランドのネクタイをコロラドではなく中国で、スーツをミシガンではなくメキシコで、家具をオハイオではなくトルコで、額縁をウィスコンシンではなくインドで作らせているのでしょうか?

ドナルド・トランプ氏は、米国を再び偉大な国にしたいと言っています。まずは米国でもう一度、実際にモノを作ることから始めるべきです。

今、この選挙で私たちの目の前にある選択肢は、国家安全保障の点でも同様に対照的です。ニュースを読んでいる人なら誰でも、私たちが直面している脅威や混乱を認識できていることでしょう。バグダッドやカブール、ニース、パリ、ブリュッセルまで、そしてサンバーナーディーノからオーランドまで。打ち負かさねばならない、強い決意を持った敵と向かい合っているのです。

人々は当然心配になり、元気付けてくれるものや確固としたリーダーシップを求めます。世界中の同盟国と協力して、国内の退役軍人の面倒を見る方が、この国は強くなれるということを理解する指導者を求めます。

この国の安全を維持し、その仕事を行う人々に栄誉を授けることは、私の最優先事項です。イランの核開発プログラムに、1発も発砲をせずふたができたことを、私は誇りに思います。これから私たちは実際にそれを行わなければなりません。そしてイスラエルの安全保障を支援し続けなければなりません。

気候に関する世界的な合意が形成されたことを、私は誇りに思います。これから米国を含めた全ての国々に、確約に対する説明責任を取らさねばなりません。そして、北大西洋条約機構(NATO)同盟国が直面しているあらゆる脅威に対して、彼らと協力し合えていることを誇りに思います。ロシアの脅威もまた然りです。

私は過激派組織「イスラム国(IS)」を打ち負かすための戦略を練りました。空から彼らの避難所を爆撃し、地上で彼らを一掃する現地部隊を支援します。情報活動によって、攻撃が起きる前にそれを検知して防ぎます。彼らがこの国の若者にインターネット経由で手を伸ばし、過激な思想に染めるのを防ぎます。簡単でも、すぐにできることでもありません。しかし間違いは起こしません。必ずや勝利することでしょう。

さて、ドナルド・トランプ氏はこう言います。「私は将軍たちよりもはるかに、ISのことに精通している」。これは実際の彼の言葉です。違いますよドナルド、あなたは分かっていません。

米軍よりも多くを知っていると彼が思うのは、わが軍がひどい状態にあると考えているからです。一方で私は上院の軍事委員会に所属する議員として活動していた時期も含め、何年もの間、軍や退役軍人の方々と密接に協力する機会に恵まれていました。だから彼がどれほど分かっていないのかを知っています。

わが軍は国の宝です。最高司令官はこの国が直面する最も困難な決断を下す責務を負っています。戦争や平和、生死に関わる決断です。大統領は命をかけてこの国を守ろうとする男女に、敬意を払わなければなりません。その中にはカーン大尉や、海兵隊員であるティム・ケイン氏の息子とマイク・ペンス氏の息子たちも含まれます。

トランプ氏に核兵器は委ねられない

自分に問いかけてみてください。あなたは本当に、最高司令官になるに相応しい気質がドナルド・トランプ氏にあると思いますか? ドナルド・トランプは荒々しい大統領選の手綱すら、うまくとれてはいません。記者から厳しい質問を投げかけられたとき、ディベートで異議が唱えられたとき、集会で抗議する人を目にしたとき、彼は少しでも挑発されると冷静さを失ってしまいます。

あなたにもし度胸があれば、想像してみてください。彼が大統領執務室で現実の危機に直面している姿を想像してみてください。ツイートで釣られるような人に核兵器を委ねることはできません!

キューバ危機のあと、ジャッキー・ケネディ夫人はこう言いました。ケネディ大統領が、あの危険な時期に頭を悩ませていたのは、自制心と抑制がある男ではなく、恐怖やプライドに突き動かされる小さな男によって、戦争が始まってしまう可能性だったと。これほどうまく言い表した言葉はないでしょう。

米国の強さは暴言から来るのではありません。賢さ、分別、冷静な決意、そして正確で戦略的に力を行使することによるものなのです。私はこのような最高司令官になる、とお約束します。

そして国の安全を守ることを真剣に考えるのであれば、銃のロビー団体に資金を頼る大統領など認めることはできません。私はここで憲法修正第2条を撤廃を主張するつもりはありません。皆さんの銃を取り上げるつもりもありません。ただ、そもそも銃を持つべきではないような人間によって、あなた方が撃たれてしまうようなことがあってほしくないのです。

私たちは責任のある銃所有者と根気強く協力し合い、常識的な改革案を議会で通し、犯罪者、テロリスト、そして私たちを傷つけようとするすべての者の手に銃が渡らないようにします。

ご存知ですか? 何十年もの間人々は、この問題を解決することは難し過ぎる、政治的に危険過ぎて関われない、と言い続けてきました。しかしお尋ねします。私たちは何もせずにただ見ているだけですか?

皆さんは銃の暴力により家族が殺された人々をこのステージで目にし、声を聞きましたね。職務中に自分たちよりも多くの銃を持った犯罪者に殺害された警察官の家族の姿を目にし、声を聞きましたね。

多くの亀裂を癒さねばならない

この問題に関しては合意点を見つけられないという考えを、私は受け入れません。私たちはこの国の亀裂を癒さなければならない。銃だけではありません。人種、移民、その他に関する多くの亀裂です。

互いに耳を傾け、話を聞き、相手の立場に立とうとするところから始めましょう。社会的な差別に直面し、自分の人生が使い捨てであると思わされているような黒人の、ラテン系男性の、女性の、立場に立ってみましょう。

子どもたちとパートナーに毎日いってきますのキスをして、危険ではあるけれど必要な仕事に向かう警察官の立場に立ってみましょう。私たちは刑事司法制度を隈なく改革して、警察と地域社会との信頼を築き直します。

そして、私たち全員の権利を守らなくてはなりません。公民権、人権、投票権、そして女性の権利、労動者の権利、またLGBTの人たちの権利、障害者の権利です。

卑劣で対立をあおるような文句には、誰が言ったものでも、立ち向かいます。ご存知でしょう。この1年、多くの人がドナルド・トランプ氏の発言を笑い飛ばし、彼がショーに出るエンターテイナーであるとして容認する間違いを犯してきてしまいました。

そのような人々は、彼があのような恐ろしいことを本気で言っているわけなどあり得ないと考えていたのです。たとえば、女性たちを豚と呼びました。米国人の判事を、メキシコに出自があるから公正ではあり得ないと言いました。障害のある記者をあざけって真似したり、ジョン・マケイン氏のような尊敬されるべき英雄で愛国者の戦争捕虜を侮辱しました。

私も本当に最初の頃は、彼が本気で言ってるとは思えませんでした。この国の指導者になりたい人があのようなことを言えるだなんて、あのような態度を取れるだなんて、想像すらできなかったのです。でも悲しい真実があります。それがドナルド・トランプ氏なのです。

結局、ドナルド・トランプ氏が理解していないのは何か。それは、米国が善良だから米国は偉大なのだということです。

偏見や大言壮語はもうたくさんですよね。ドナルド・トランプ氏は真の変革案を示していません。何の約束も提示していません。それでは、私たちは何を提示しているでしょう? 全国の人々の生活を改善させ安全を守り、皆さんに良い仕事を与え、子どもたちにふさわしい機会を与えるための大胆な政策です。

明確な選択ですよね、友人の皆さん。米国の全世代の人々がこの国をもっと自由に、公正に、強くするため協力し合ってきました。それを1人で行った人はいないし、また、それができる人もいません。

私たちを分裂させてしまうようなものが多々ある時代であることは分かっています。私たちがどのように協力し合えるのか想像することが難しいことも分かっています。しかし、私が今夜ここにいるのは、進歩は可能だと皆さんにお伝えするためです。私は、打ちのめされ、それでもすぐに立ち直る米国中の人々の生活のなかに、それを見てきたのです。だから信じられるのです。

母が教えてくれたこと

私の人生にもそのようなことがありました。自分を鼓舞して仕事に戻らねばならなかったことは、少なくありませんでした。私の人生のほかの多くの教訓と同様、これも母が教えてくれました。彼女は、私がどのような課題から逃げることも許してくれませんでした。

近所のいじめっ子から隠れようとしていたときも彼女はドアを閉め、外に戻りなさいと言いました。そして彼女は正しかったのです。いじめっ子には立ち向かわなければなりません。勝率が低くても、戦う相手が凶暴であっても、事態をより良くするために。

母が亡くなって数年が経ちましたが、私は毎日寂しく思います。今でも、何であろうと正しいことのために働き続け、戦い続けろと促す母の声を聞いています。それこそ私たちが国家として協力し合うべきことです。

ミュージカル「ハミルトン」の歌にあるように、私たちは生きているうちに栄光を見とどけることはできないかもしれませんが、この闘いに喜んで加わろうではありませんか。自分自身では決して見ることのできない庭園に種を植えることを、われわれの伝説にしようじゃありませんか。

だからこそ、私たちはこのホールだけではなく、地球上に存在しているのです。建国の父たちは、それを教えてくれました。彼らと、その後に続く多くの人たちが。国への愛と、次世代のために何かよいものを作り上げたいという、無償の情熱で結束したのです。

これが米国の物語です。私たちは今夜、新しい章を一緒に始めます。

米国をかつてないほど偉大な国に

そうです。世界は私たちが何をするか注目しています。そうです。米国の運命は私たちが選ぶのです。米国の皆さん、一緒に強くなりましょう。勇気と自信を持って未来を見つめましょう。愛する子どもたちと愛する国のために、より良い明日を一緒に築きましょう。私たちがそうすれば、米国は、かつてないほど偉大な国になります。

ありがとうございます。皆さんとアメリカ合衆国に神のご加護を!

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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