タクシー運転手も避けて通れない「英語」の道 MKタクシーは、なぜ英語教育を強化するのか

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「『エムケイってどこ?タクシー会社で運転でもしたいの?』と両親も困惑していた」と話すリッラさんは、タクシー会社の社員ながら運転免許証を持っていない。「両親が幼稚園の先生をしており、もともと教育に興味があった。18歳の頃から教育のアルバイトをしており、これからもこの経験を生かしてエムケイの英語教育に貢献したい」という。

東京オリンピックを見据え、エムケイは昨年に留学制度も拡充した。それまでは年に1度、4~5人の運転手をイギリスへ語学留学に送り出していたが、昨年1月からは年3回、最大40人をフィリピン、イギリス、オーストラリアなどへ最大2カ月間留学させるなど、制度を充実した。

57歳でイギリスに留学したエムケイのある運転手は、「現地の家にホームステイをしながら、インドや中東などさまざまな国から集まった若者たちと一緒に現地の語学教室に通った。人生最高の1カ月だった」と当時を振り返る。「運転手の方々はもともと人とお話しするのが好きなので、観光案内も英語で行いたいという気持ちは強い。社内の研修はあくまでもきっかけで、自分からどんどん学びを深めてほしい」(リッラさん)。

日本にいても外国人相手の商売が必要な時代に

日本政府観光局(JNTO)によると、昨年1~11月の訪日外国人客数は、1796万人に上っている。過去最高を記録した一昨年(2014年)の年間客数1341万人をすでに上回っており、年間で2000万人に迫る勢いだ。2020年の東京五輪開催を控えて、ますます増加することも考えられる。

中国人の「爆買い」に代表されるように日本国内の各種小売店、家電量販店などだけでなく飲食店や公共交通機関など、従来は日本人が大半だったところを外国人がどんどん利用するようになってきている。日本の人口が減少に転じ、将来的に日本人の数が減っていくのが確実な中で、日本国内にいても訪日外国人を相手にする商売の重要度は増してきており、そこに宝の山が隠されているかもしれない。

エムケイはタクシー会社としてはかなり先進的ながら、日本国内を走り回るタクシー運転手でさえも、英語習得に向き合わなければならなくなってきていることを示している。日本の中にいても国際化はどんどん進み、「日本の中で働くだけなら英語は話せなくてもいい」というような、甘いことも言っていられなくなってきている。

 

東出 拓己 東洋経済 記者

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ひがしで たくみ / Takumi Higashide

半導体、電子部品業界を担当

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